第7話 ページ9
*
自分の席に帰ろうとした友達はふと思い出したのか、そういや、と言って私の机を指先で軽く叩いた。
「A、この前言ってた過去問なんだけど」
「あぁ、あの私立大学の?」
彼女の言葉で、1週間前に受験候補の私大の過去問を探していたことを思い出す。
「うん。私も調べてみたんだけど、あれ普通科の校舎にはないっぽい」
「…普通科の校舎には、ってことは違う学科の校舎にはあったりするの?」
夢ノ咲学院は学科ごとに校舎が違うため、図書館や保健室などの設備も学科ごとに整備されている。
基本内容は同じだが、図書館の蔵書のように校舎によってある程度差があった。
「図書室で見てみたら、アイドル科の校舎だけにあるらしくて」
アイドル科、と聞いて彼女がどことなく渋る意味がわかった。
同じ学院でも、アイドル科は別格だった。
アイドル科の校舎は高い塀で仕切られているし、別の学科の生徒が入るにも割と面倒な手続きが必要だった。
そこに所属する生徒のことを考えれば致し方ないのだが。
アイドル科の生徒はアイドルの卵、もしくは現在活躍している正真正銘のアイドルだ。
他の学科には彼らのファンも少なからずいる。
同じ学院の生徒といえど、万が一行き過ぎたファンがアイドル科の生徒の学校生活を脅かす可能性も捨てきれない。
そのため、他の学科の生徒がアイドル科の校舎に入ることは容易ではないのだ。
私の考え込んだ様子に、彼女もやっぱりという感じで言葉を続けた。
「まあ、そういうわけよ。A、国立大志望だから必須ってわけじゃないだろうけど。どーしても解きたかったらアイドル科の図書室から借りることになるね」
「なるほど。ありがとう、調べてくれて」
「んーん、大丈夫。はやく調子直しな」
ちょうど帰りのホームルームの始まりを告げるチャイムが鳴った。
離れていく彼女に手を振って、さて、と考える。
確かに彼女の言うとおり、第一志望は国立大で私大は滑り止めのつもりだが。
どうしようかな。
考えに耽ったのが、またぼんやりしているのかと思われたらしく、教壇に立った担任の先生に名指しで帰りの準備を促された。
*
114人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
赤憑(プロフ) - ウォッキャギャキ(ャッキャイ!!ー映像が乱れておりますー え〜、可愛すぎませんこと??藍良くんも一彩くんも!!応援しています!頑張ってください。PS︰差し出がましいのですが私の作品を見て頂けると私が発狂します。(?) (2023年3月15日 20時) (レス) @page12 id: 805737b448 (このIDを非表示/違反報告)
ましゅまり(プロフ) - 赤憑さん» とんでもない褒め言葉ばかりいただいて本当に恐縮しています笑 ありがとうございます!ひいあいの恋愛成就は藍良ちゃんがどれだけ一彩くんに心を開けるかが重要だと思っているので笑 ぜひ藍良姉とともに見守ってほしいです^ ^ (2023年3月9日 16時) (レス) id: 93a047970d (このIDを非表示/違反報告)
赤憑(プロフ) - 叫び散らした…笑 主さんがとても面白い方だからこんな面白い作品ができるんですね!!藍良くんが片思い…ですか……え、かわいっ。 え〜、なにそれ、めちゃくちゃ可愛いんですが (2023年3月8日 23時) (レス) @page7 id: 805737b448 (このIDを非表示/違反報告)
ましゅまり(プロフ) - 赤憑さん» ギャー!!そんなふうに言ってもらえるのめっちゃくちゃ嬉しすぎて叫び散らかしました!!気まぐれ更新ですが頑張ります!ありがとうございます!!! (2023年3月7日 10時) (レス) id: 93a047970d (このIDを非表示/違反報告)
赤憑(プロフ) - え、うっわ…何これ。神作ジャン…!?え?え?え?ずっっと求めていた作品なのですが!?なんで人気出てないんだ、!!!応援しています!これからも頑張ってください! (2023年3月6日 22時) (レス) id: 805737b448 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ましゅまり | 作成日時:2023年2月26日 16時