おとなりさんのセンラさん。【歌 い 手】

おとなりさんその23 ページ25

＊センラSIDE＊

　
「え、車？」

「おう、身バレしたらあれやろ。それに車の方が楽やし。」

「いや、私はいいけど…センラ、運転辛くない？」

「俺から誘っとるんやし、気にせんでえぇよ。」

　
Rouge…いや、Aと一緒に近くのコインパーキングに止まっている
シェアリング用の車に乗り込む…意外と大きいなこれ。

　
「んじゃ、しゅっぱーつ。」

「おー」

　
いつも以上に安全運転で行かないとなぁ…そう思いながらエンジンをかけて車を走らせる。
Bluetoothでスマホを接続して、音楽を流していく。

　
「プチカラオケできそう。」

「せやな…歌ってえぇよ？」

「ん？待って、歌詞歌詞……」

　
そう言えば、スマホで歌詞を探し出すA。
正直言って、結構俺の内心はパニクっている。いや、だって好きな人と2人で水族館。
かつ、相手の服装はいつもより女性らしくて俺のイメージカラーが入っている。
…これでいろいろ考えへん方が男やないやろ！？

　
「そいやさーセンラ。」

「なんや？」

「なんかコラボしない？」

「えぇよ、何にしよか。」

「春の曲でどうよ。」

「春かぁ……」

　
流れてくる曲を口ずさみながら、春の歌を考える
こいつと歌うなら、バラード調の曲がいいけど……

　
「桜ノ雨でもやる？」

「めっちゃ懐かしいやんそれ。」

「今では卒業式で歌ってるとこもあるんだってよ。」

「…俺らの時代には考えられんな。」

　
なんて話をしながら高速を飛ばしていく。
平日ということもあり、空いているから予定より早く着きそうや。

　
「今日行くとこって、近くにショッピングモールできたとこ？」

「そうやで、昼飯とかはそっちで食えばえぇやろ。」

「そだね。」

「そろそろつくで。」

　
　
高速を降りて少ししたら、海岸が見えてくる。
それと同時に、水族館の看板も見えてきた。
…よし、ここまでは順調やな。


　
「んじゃ…水族館の中はセンラって呼ばんでな。」

「そっかえっと…泉？」

「そ。」

　
名前で呼ばれることの破壊力が異様に高くて、短い返事しか返せなかった自分を呪いたい。
空いている駐車場に車を止めて、Aと一緒に入り口に向かう。

　
「んー…運転ありがとね。」

「えぇって、気にせんといて。ほい、チケット。」

「ありがと。」

　
さ、ココからやでセンラ。
このデートを成功させるんや…やるで……！


　
そっちに気が行って、俺は気づかなかった。
俺らの後ろをずっとついてきていた青い車に。

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