『私』 【おそ松さん】

40話 ページ41

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"何もわかってない"



確かに、そうだ。すごいや、おそ松兄さんは。本当に、この二人は何もわかってない。



びゅうびゅうと吹き付ける風が、強さを増す。



「末っ子でさえ、ちゃんと気づいたのに。兄さん達にはわからないんだね」



おれの言葉にきょとんとする二人。先程まで顔を出していた夕日は、いつの間にか厚い雲によって隠されてしまった。



「何が言いたいの」



何も見えてない、兄二人。



「あのさ、十四松。ボク達、言われなきゃわからないよ」



こんなに言ってもわからないのなら、どんな言葉だって通らない。



「おそ松兄さんもおそ松兄さんだよ。全部わかってるみたいな口ぶりでさ」

「チョロ松兄さん。あいつはなんも見えちゃいないよ」



違う。おそ松兄さんは、ずっとずっと前から気づいてた。見えてた。



「まあうちの長男は馬鹿だから」



そうだよ。長男は、おそ松兄さんは、なんにも学習しない馬鹿だよ。それは自分も同じだけど。



でもさ



「自分の周囲が見えてない奴の方が、よっぽど大馬鹿野郎だよ」



おそ松兄さんは、確かに馬鹿だけど。でも、ちゃんと見てる。ちゃんと気づく。ちゃんと、長男してる。



周りの大切な人を、モノを、しっかり守ってる。



だから、なるよ、おれも。



――君を守れる人間に。




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