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30話 ページ31




チビ太が帰って行った後、しばらくその場に立ち尽くしてぼーっと、チビ太が出ていった場所を眺めていた。



閉じられたドア。ほんの少し、日は沈みかけていた。



私は、外へ出かけた。



やはり冬。気温が低いのか、薄着できてしまったことを後悔した。


息を吐き出せばもくもくと、白い息が宙を漂う。冬の風が、私の頬を刺す。



ぼんやり歩いていれば、いつかの公園。私はまたベンチに腰掛けた。……やっぱりひんやりと、冷たい。


長めの前髪が微かに鼻先に当たってほんの少しむずむずする。


木枯らしが吹くなか、ぼんやりと日が沈むのを眺めていれば、


「あ」


声が聞こえて振り返ってみれば、猫を抱えた一松が、私のことを驚いたように見ていた。


しかし、暫くするとバツが悪そうな表情になって、私から視線を外した。そして躊躇いがちに


「あの、この前は……、」


もごもごとなにか言葉を発した一松。私は一松に抱えられてる白猫を一瞥した後



「この前?なんのことですか」



声のトーンを下げて、私は一松の言葉を遮る。


「……悪いのは僕達で……、だから、」

「松野君が言ったことは正しいですよ。私、トト子なんて大嫌いですから」



突然の私の言葉に驚いたのか、俯かせていた顔を素早く上げて、私の方を見る。


びゅうっと吹き付ける風が、私達の髪を揺らした。



「消えればいいのにって思ってます。あんな役立たずで出来損ないの子。チヤホヤされて、喜んで。馬鹿で、ッ!?」



ああ、私は何回ぶたれたらいいのだろう。



一松に叩かれた頬を私は抑えて、ぼんやり考えた。



「……ねえ、それ本心?」


一松の声が、震える。私は平然と


「もちろん。本心に決まってるじゃないですか 」


その言葉を聞いた途端、一松は憎しみでその表情を満たした。そして、せせら笑って


「ほらなおそ松兄さん。コイツはトト子ちゃんのことなんて何も考えちゃいないんだ。兄さんこそよく見なよ。……この出来損ないを」



うわ言のようにそう呟いた一松は、もう私とは視線を合わせようとせず、その場から立ち去った。



「さよなら、一松」



私の声は、冬の冷たい風にふかれどこかへ消え去った。




.

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この前のあいつ(プロフ) - おみかんさん» 全部見てくださったのですか!嬉しいです!応援ありがとうございます! (2016年3月24日 10時) (レス) id: d7f15c5c72 (このIDを非表示/違反報告)
おみかん(プロフ) - こんにちは!作風すごく好きです。小説3つすべて拝見しました。とても素敵でどれも続きが楽しみです。応援してます。 (2016年3月22日 5時) (レス) id: 9b40e47e5e (このIDを非表示/違反報告)
この前のあいつ(プロフ) - 魔女?さん» わかりにくくてごめんなさい。主人公は栗毛の子なんです。プロローグは、妹のトト子ちゃんの方を先に書いたんです。本当に混乱させてしまってすみません。 (2016年3月9日 11時) (レス) id: 5a53ac0796 (このIDを非表示/違反報告)
魔女? - 私が違ったら、すみません。 (2016年3月9日 11時) (レス) id: f29a288e89 (このIDを非表示/違反報告)
魔女? - 主人公ちゃんは、黒髪ロングだったと思うんですが……? (2016年3月9日 11時) (レス) id: f29a288e89 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:この前のあいつ | 作成日時:2016年1月23日 21時

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