【おそ松さん】松野さん家と私 3 (ページ9)

今日:32 hit、昨日:18 hit、合計:2,846,768 hit

■明日は大雪ページ9

.

段ボールを抱えておそ松さん家に行くと、待ち構えていたようにお母さんが出てきて、「Aちゃん、いらっしゃい」と笑ってくれた。

「お邪魔します」

「お邪魔しますじゃなくて、ただいまでいいのよ。ね、お父さん」

「あぁ。自分の家だと思っていいからね」

「落ち着くまでしばらくの間、よろしくね」

穏やかな顔で出迎えてくれるお父さんにも、段ボールを抱えたまま頭をさげる。

小さく後ろを見ると、6人とも笑顔で私を見ていて、なんだか照れる。
1人身軽なおそ松さんはタックルするように私の肩に手をまわすと「いっそのこと嫁に来ちゃう？」と笑った。

「さー、Aちゃんの部屋は客間でいいかなー」

「いって！チョロ松蹴るなよ！！今日お前俺に対する暴力がひどいぞ！！」

先陣を切って家に入っていくチョロ松くんの後について家に上がると、階段の下の襖を開けて入れてくれたのは、いつか私が朝起きたら寝ていた客間。

みんなは荷物をおろすと、「自由に使っていいからね」と言って気を使ったのかいそいそと出て行った。

「…………」

ありがたさしか感じない。

私は何にもない部屋の真ん中にぺたっと腰を下ろすと、携帯電話がポケットの中で震えた。

(……ありゃ、珍しい)

「もしもし」

『あー、もしもし…ミーザンス』

「どちらのミーでしょうか」

『お前！わかってて言ってるザンショ！！』

電話を耳に当てると、微妙に気まずさを感じているらしい井矢見さんの声が耳に響く。私がしらばっくれると、「だいたい番号みりゃイヤミ様って分かるザンス！」と舌打ちされた。

「どうしたんですか、いきなり」

『……おそ松から、昨日聞いたザンス』

「……え、」

『チミにばっかり残業任せて悪かったザンスネ。一応チミも女だったザンス』

「…一応も何も歴とした女です」

井矢見さんが謝るなんて、明日は大雪だなと思いながら、笑いをこらえて言い返すと「声が震えてるザンスよー」とキレ気味の声が聞こえる。

私はごまかすように咳払いをして、改めて携帯を耳に押しあてた。

「残業は私が好きでやったことですし、今回のことは私の危機管理能力のなさが原因です。井矢見さんのせいじゃありません」

『………』

「でもまあ…来週からお仕事をちゃーんと分担してやっていただけるとありがたいんですが」

私が半笑いで言うと、井矢見さんは「はいはい当たり前ザンス」と適当に返事をしてぶちっと電話を切った。

.