□敵に塩を ページ46
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トド松
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いや、なにこの状況……
(猛烈に帰りたい…)
酔っ払ったAちゃんに連れられて、チビ太の屋台までやってくると、僕、Aちゃん、バイトくんの順で屋台に座る。
Aちゃんは座ると早々にして寝てしまった。
チビ太は何かを察したのか、静かに座って僕たちの方をチラチラ見てる。
「あの、トド松さん」
「なに、バイトくん？」
「あ、俺千夜です」
「へー、で、なに？バイトくん」
「聞いてませんね」
バイトくんの冷ややかな目線を浴びながらジョッキからビールを飲むと、「あの」と真剣な顔でバイトくんが僕を見る。
「Aさんのこと好きなんですか」
「うん、好きだよ？」
「…そうですか」
僕らの空気も察しないで爆睡してるAちゃんの顔にかかった髪をちょいちょいとどかしながら、「可愛いー…」と小さく笑う。
「Aさん、トド松さんとデートして、すごい楽しかったって言ってました。トド松さんは本気じゃないけど、私は女の子扱いされて嬉しかったって」
「バイトくーんなに敵に塩送ってんの？」
「いや、塩を送ってるわけじゃなくて…」
「Aさんのこと本気なら、ちゃんと安心させてあげて欲しいんです」とキリッとした顔で僕を見た。
Aちゃんにしても、バイトくんにしても、僕をどんな遊び人だと思ってんの。僕は苦笑いしながら「いや、ちゃんと本気でAちゃんのこと好きなんだけど…」と頬杖をついた。
「…デートした時も、Aちゃんだけだよって言ったんだけど…どうしたら信じてくれるのかなぁ」
僕は小さくため息をついて、気持ちよさそうに寝てるAちゃんの頭をぽんぽんと撫でる。
バイトくんは、暫く僕の顔を見つめると決心したようにぐいっとビールを飲み干して「トド松さん！」と大声で呼ぶ。
「ちょ、声大きいよ！」
「ごちそうさまでした！」
「え！？僕のおごりなの！？うそでしょ！？」
バイトくんは「あきらめたわけじゃないですよ！ただ…命の恩人には敵わないので…」と苦笑いして結局お代も払わずに帰ってってしまった。
「…トド松ぅ、今日のとこはツケといてやるから、ネーちゃん連れてさっさと帰れ」
「あぶねぇだろ、バーロー」とニヤニヤ笑ってくるチビ太に「ありがと…」とお礼を言うと、Aちゃんを帰るよーと揺すった。
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