検索窓
今日:31 hit、昨日:18 hit、合計:2,846,767 hit

■欲しい言葉 ページ4

.


どうしよう…。

警察呼んだほうがいいかな。すぐにおそ松さんが来る保証もないし…。



震える手で耳をふさぎながら考え込む。

ガチャガチャと音が止まらなかったドアが、突然ピタッと止まって、私はそっと後ろを見上げる。



「……か、帰った……?」



ほぉっと息をついたところで、またピンポーンと私の背筋を凍らせるインターホンの音が真っ暗な部屋の中に鳴り響いた。

肩を跳ねさせて思わずあとずさると、「A」と聞きなれた声がドアの向こうから聞こえる。



「俺」



よろよろしながらドアを開けると、おそ松さんがなんでもない顔で立っていた。



「ここ立ってた変な男なら追っ払…」

「……」



笑いながら言いかけるおそ松さんに、安心感で体の力がすーっと抜けて、思わずぎゅっと抱きつく。

私の言葉に「…お、おっとぉ?」とふざけた声を上げるおそ松さん。「……こ、こわかった」と声を振り絞って言う。

そんな私の頭をおそ松さんの手がぽんぽんと撫でた。



「もー大丈夫」

「……」

「俺がいる」



こんな時ばっかり優しい声でかっこいいこと言って…おそ松さんの体温と言葉にぼろぼろと涙が止まらない。

しゃくりあげる私に「よしよーし、兄ちゃんがついてるからなー」とあやすように背中を優しく撫でてくれる。



「A、部屋、入っていい?」



おそ松さんの言葉にぱっと離れて小さく頷くと、2人で部屋の中に入る。

おそ松さんは鍵を閉めると電気をつけて、靴を脱いで部屋の中に入った。



「……す、すいません…いきな、いきなり」

「あーいいよいいよ、喋るな。んー…とりあえず風呂、入ってあったまってきて」




必死で喋ろうとする私の背中をぽんぽんとさすると、お風呂場の方に背中を押す。「え」と小さく呟けば、おそ松さんがいつものようにニヤニヤして私を覗き込む。



「なーに?おそ松さんも一緒に入ってーって?」

「なっ…!ち、違います…」

「大丈夫大丈夫、俺はこたつあっためて待ってるから、ゆっくり入ってきて。心配しなくても帰らねーよ」



顔がほてる私にケラケラ笑うと、ひらひら手を振ってこたつに入っていった。

……なんで、待っててくれるのか心配してるってわかったんだろう。おそ松さんは適当なのに、いつも欲しい言葉をくれる。

私はタオルを掴むとお風呂場のドアを開けた。




.

■あまりに無用心→←■SOS



目次へ作品を作る
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (1718 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
3645人がお気に入り
設定タグ:おそ松さん
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ちか | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2015年12月29日 11時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。