■欲しい言葉 ページ4
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どうしよう…。
警察呼んだほうがいいかな。すぐにおそ松さんが来る保証もないし…。
震える手で耳をふさぎながら考え込む。
ガチャガチャと音が止まらなかったドアが、突然ピタッと止まって、私はそっと後ろを見上げる。
「……か、帰った……?」
ほぉっと息をついたところで、またピンポーンと私の背筋を凍らせるインターホンの音が真っ暗な部屋の中に鳴り響いた。
肩を跳ねさせて思わずあとずさると、「A」と聞きなれた声がドアの向こうから聞こえる。
「俺」
よろよろしながらドアを開けると、おそ松さんがなんでもない顔で立っていた。
「ここ立ってた変な男なら追っ払…」
「……」
笑いながら言いかけるおそ松さんに、安心感で体の力がすーっと抜けて、思わずぎゅっと抱きつく。
私の言葉に「…お、おっとぉ?」とふざけた声を上げるおそ松さん。「……こ、こわかった」と声を振り絞って言う。
そんな私の頭をおそ松さんの手がぽんぽんと撫でた。
「もー大丈夫」
「……」
「俺がいる」
こんな時ばっかり優しい声でかっこいいこと言って…おそ松さんの体温と言葉にぼろぼろと涙が止まらない。
しゃくりあげる私に「よしよーし、兄ちゃんがついてるからなー」とあやすように背中を優しく撫でてくれる。
「A、部屋、入っていい?」
おそ松さんの言葉にぱっと離れて小さく頷くと、2人で部屋の中に入る。
おそ松さんは鍵を閉めると電気をつけて、靴を脱いで部屋の中に入った。
「……す、すいません…いきな、いきなり」
「あーいいよいいよ、喋るな。んー…とりあえず風呂、入ってあったまってきて」
必死で喋ろうとする私の背中をぽんぽんとさすると、お風呂場の方に背中を押す。「え」と小さく呟けば、おそ松さんがいつものようにニヤニヤして私を覗き込む。
「なーに?おそ松さんも一緒に入ってーって?」
「なっ…!ち、違います…」
「大丈夫大丈夫、俺はこたつあっためて待ってるから、ゆっくり入ってきて。心配しなくても帰らねーよ」
顔がほてる私にケラケラ笑うと、ひらひら手を振ってこたつに入っていった。
……なんで、待っててくれるのか心配してるってわかったんだろう。おそ松さんは適当なのに、いつも欲しい言葉をくれる。
私はタオルを掴むとお風呂場のドアを開けた。
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