■死のう ページ12
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「すごい熱気でしたねぇ」
「A、ああいうの興味あるの?」
「いや、どんなもんなのかなぁと思って。それに、可愛い女の子を見るのは目の保養です」
「いや、あのぐらいなら普通にクラスにいるレベル」
二人で入ったのは、地下アイドルの劇場。ちょっぴり有名な橋本にゃーちゃんが出ていて、可愛かった。
おそ松さんの言葉を聞いて、彼女でそれなら私はどうなるんだろうという思いは胸に収めた。
「握手会もやってるんですね、へぇー」
「な、こんな世界もあるんだな」
横をすーっと通り過ぎようとした時、おそ松さんが「あ」とストップする。
「チョロ松だ」
「え、チョロ松さん?」
「A、ちょっとここで待ってて」
握手会の列に並んでいるチョロ松さんに「チョロ松」と声をかけに行ったおそ松さん。
順番が来ると何故かおそ松さんがにゃーちゃんと握手をしている。
「松野おそ松でーす」と自己紹介を始めて、「うちの弟がいつもお世話になってます」と言ったと思えばセッ【ピー】とか言い出す始末。
「…中学生か」
苦笑いでぼそりと突っ込むと、チョロ松さんがおそ松さんを掴んで握手会を後にしてこちらにやってきた。
そして私の顔を見るとピタッと静止した。
「……えぇぇ!?Aさん!?」
「こんにちは…」
「Aー俺にゃーちゃんと握手してきた」
「貴様とはもう赤の他人だ」
冷めきった目でおそ松さんを睨みつけると、チョロ松さんは「最悪だ…見られた…死のう…」と私に小さく頭を下げてトボトボと歩いて行った。
「えー俺は良かれと思って言ったのに…」
「いや、あれは怒りますよ…チョロ松さん結局にゃーちゃんと握手できなかったし…」
どんどん離れていくチョロ松さんの後ろ姿を見ながら、おそ松さんが「A」と真面目な顔で私の名前を呼ぶ。
「なんですか?」
「お前、チョロ松を励ましてやってくれ」
「はい?」
「あいつ怒るとメンドクセーんだよ…頼む!!」
「街を案内してくれる約束は…」
「そんなもんいつでもしてやるから!な!」
土下座をする勢いのおそ松さんに、溜息をつきながら「貸し1ですよ」と言うと、小走りでチョロ松さんを追いかけた。
「チョロ松さん!」
「…ほっといてください…僕みたいなクソオタクは死ねばいいんだ…」
「飲みに行きましょう!チョロ松さん!」
「え?」
きょとんとするチョロ松さんの手を掴むと、昼間から開いている居酒屋の戸を開けた。
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