■冗談 ページ11
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「あー!美味かった!」
「ごちそうさまでしたー」と手を合わせるおそ松さんに皿を洗いながら「お粗末様でした」と言うと、「なにそれギャグー?」と笑われた。
「A、どこか行きたい所とかある?」
「そうですね……雑貨屋さんとか服屋さんとか!可愛いお店ありますか?」
「可愛い店か…下着屋なら何軒か…」
「…殴りますよ?」
自分の分のお皿を運んできてくれたおそ松さんをギロッと睨んだら「冗談じゃん」と笑って謝られた。
「でもさ」とおそ松さんが私の芋ジャージをちょいっと摘む。
「芋ジャー着ていくならおっさんが行く店とか教えようか?」
「…」
「痛い…」
バカにしたような目で笑いながら言うおそ松さんの足をどんっと踏むと「踏むことなくね…?」と弱々しい声で言ってしゃがみこんだ。
「だからジョークだって!怒んなよ」
昨日今日であったばかりの人に抱く感情ではないかもしれないけど、この人相当いろいろ手遅れな感じがする。
お金はない、
職はない、
デリカシーはない。
「…あれ、怒った?怒らなくても良くない?Aちゃーん?」
「…」
「いや、でも俺はさ、ふわふわ女子〜って感じで料理なんてできませーん!きゃは!って女よりは」
「…」
「芋ジャー着てても、Aみたいな奴の方が好き」
なんともいえない裏声できゃぴっ♡としながら言って、キメ顔で口説き文句を言ってくるおそ松さんに思わずうっと口を噤む。
そんでもって天然たらし。
ちょっと熱くなるほおを隠しながらもう一度おそ松さんの足を踏む。
「なんで!?俺何にも悪くなくない!?」
「そういう口説き文句は定職見つけてから言った方がいいと思いますよ」
「いやー俺、夢はビッグなカリスマレジェンドだからなぁ〜」
「なかなか条件厳しいんだよなー」と言って置いてあったせんべいを摘まみ始めるおそ松さんの背中を押して家から急いで追い出すとぱぱぱーっと出かける用意をした。
「さ、行きましょう!」
「…女の子の隣歩くの1年ぶりくらいかもしれない」
ボソリとつぶやきながら嬉しそうに私の隣を歩き始めるおそ松さんを見ながら私も笑いながら歩き出した。
「昔はもうちょっと古き良きって感じの街並みだったんだけど、ミーハーな店どんどん建って」
「…へぇ、あ」
「…A、こういうの興味あんの」
パーカーのポッケに手を突っ込んだまま、立ち止まる私の目線の先を見て「ほう」と呟いた。
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