□男の子 ページ41
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「うわ!見て!Aちゃん、あの家屋根飛びそう!」
「真っ直ぐ歩いて十四松く…うわ!」
風もだんだん強くなってきて、もはや傘をさしてる意味があるのかないのかもよく分からない。
飛んでいきそうになる傘を十四松くんがぐいっと掴んで引き戻す。…細身だけど力あるんだ。
「俺んちの屋根も飛んでそー」
「私のアパートなんて、建物もろともなくなってそうだよ…」
私が力なくあははと笑って言うと、十四松くんは「ま、アパートなくなったらうちに住めばいいよ!」とあっけらかんと言ってくれた。
冗談でもなんでも、こういう風に言ってくれる存在が身近にいるのは嬉しい。
「十四松くんちは、優しい人ばっかりだね」
「え、そう?クソみたいな人ばっかりだよ?」
「いやまぁ、クソみたいな時もあるけど…」
おそ松さんは何かと励ましてくれるし、
カラ松さんはどこまでも女の子に気を使ってくれる人だし、
チョロ松さんは何かと気が利いて優しい。
トド松くんも世渡り上手ないい子で、
一松くんもなんだかんだ優しいし、
お母さんも家族だと思ってくれていいなんて言ってくれた。
一人一人語っていると、十四松くんが「ハイ!」と元気よく手を挙げる。
「オレは!?」
「十四松くんは、パーカー貸してくれた」
「今俺もAちゃんの上着借りてるし、Aちゃんも十分優しいよー!」
「あはは、お互い様だね」と鞄を胸の前で抱いたまま小さく笑うと、十四松くんは「ん?」と言いながら胸元のあたりをきゅっとつかんだ。
「十四松くんは、私と同じくらいの年なのに、弟みたい」
「………Aちゃんがお姉ちゃんかー」
「それはないなー」となんとも複雑なことを言いながらヘラヘラ笑っている十四松くん。
私が少し寂しくなって「なんで?」と尋ねると、「だって…」とあっけらかんと答える。
「もし姉ちゃんが相手で、下着透けててもなんとも思わないだろうし」
「はい?」
「Aちゃんのブラジャー見てオレはムラッときたから姉ちゃんではないなー」
なんだその理由は…と私は小さくため息をつくと、「十四松くん意外と男の子だね」とつぶやいた。
「え、オレ普通に男の子だよ。見る!?」
「いい!!」
マジで見せてこようとする十四松くんを必死で止めると、松野さん家の前に着いた。
十四松くんに別れを言おうとすると、「あがっていきなよー!」とぐいぐい背中を押されたので、お言葉に甘えて小さく中に踏み込んだ。
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