静謐の庭 壱(6/8up) ページ34
毎週月水土曜日、16時。
住宅地の奥まった一角の、昭和の中頃に流行ったどこにでもある造りの一軒家の駐車場に車を停める。
庭木が勢いを増す5月の終わり、涼しい風と黒い雲が天気の急変を告げるかのよう。
屋根付きは、このお宅の主人が使うからと、私はその横。
ほんの30分、雨に降られたところで大した問題でも無い。
チャイムを鳴らす。
「こんにちは、訪問マッサージの小宮山です」
『――はい、どうぞ』
若い男性の声は、いつもの彼。
濃い灰色の門扉を開けると、玄関までの2メートルほどが石畳。躓かないように歩いて、繁り始めた庭の草花に目を奪われる。
空はまだ青が残って、雲は走り出して、生ぬるい風が騒いで。
顔にかかった髪を避けて、玄関の引き戸を開けた。
「こんにちは、惠美子さん。お加減いかがですか？」
介護用ベッドの傍らに用意された丸椅子に荷物を置いて、その上の彼女に声をかける。
パーキンソン病がかなり進行して会話は困難になったけれど、簡単なコミュニケーションなら取れるし、認知機能にも大きな衰えはない。
口をはくはくと動かし、掠れ声が「だいじょうぶです」と教えてくれた。私が微笑めば笑みも返る。
ほっとして血圧計を取り出した。
「今日はちゃんと測れるかな、惠美子さん体の力抜いてくださいね」
パーキンソン病の症状で、どうしても振戦が出てしまったり体に力が入ったりしてしまう惠美子さんはそっと瞳を閉じた。
加圧されていく音を聴きながら、私の耳は廊下を歩く足音も拾っている。
「こんにちは小宮山さん」
「こんにちは二宮さん。今日は顔色良いですね？」
「昨夜ぐっすり寝たからね。ど？ 惠美子さんは」
「血圧85の44、脈は98ですね」
「低いけど、まぁいつも通りか」
「そうですね」
二宮さんは、惠美子さんよりもっと色白な顔でベッドを覗き込んだ。
「惠美ちゃーん、ちゃんとマッサージしてもらってよー」
「ふふっ、頷いてますねぇ」
「小宮山さん来る日は機嫌いいんだよ、あなたのこと気に入ってるんだね」
「嬉しいな。惠美子さん、血圧オッケーですよ。横向きましょうか、マッサージ始めますね」
「俺向こうでシゴトしてるからなんかあったら声かけて」
「はい」
週に3回、月水土。
私はこのお宅に医療的マッサージをするために訪問している。
医師の同意を得て、医療保険を使ったマッサージで、もう一年。
関われば数年単位が殆どになる患者様の中でも、惠美子さんは付き合いは短い方だった。
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お塩(プロフ) - ゆぃさん» そうなんです(笑)マチ子事件簿の裏にはこんなことがあったかも知れないんです(笑)マチ子ちゃんにMJ呼びさせるの超楽しいです☺☺☺ (2022年4月27日 9時) (
レス) @page27 id: c86e5730cc (このIDを非表示/違反報告)
ゆぃ(プロフ) - な、なんと！！あのお話の裏にはこんなことがあるなんて…🤣🤭🫣最高です💜 (2022年4月27日 6時) (レス) @page27 id: 7a81be16ec (このIDを非表示/違反報告)
お塩(プロフ) - ラムさん» ラムさんへ、午後の仕事の活力になってるなら良かったです！！相変わらずの安心安全お塩製なので大丈夫です(笑)バレンタインか？みたいになりますけどww (2022年2月14日 18時) (レス) id: c86e5730cc (このIDを非表示/違反報告)
お塩(プロフ) - ゆぃさん» ゆぃさんへ、お潤くんにならストーキングされてもなんのそのですね！今度本気でやばい方の書いてみようかなとか(笑) (2022年2月14日 18時) (レス) id: c86e5730cc (このIDを非表示/違反報告)
お塩(プロフ) - いくさん» いくさんへ。わぁぁそんな楽しんでいただけるなんて嬉しいですありがとうございます！！基本やっぱりハッピーエンドがイイですよね、まだまだここ増やしていきますのでこれからもぜひお付き合いください！ (2022年2月14日 18時) (レス) id: c86e5730cc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：お塩
| 作成日時：2021年11月2日 0時
