余計な一言 ページ23
「一人で食べるの気が引ける」
「いやあったかいうちに食べてよ」
「うん、いただきます！」
「ワインとか無いの？」
「ないなぁ」
もぐもぐと口を動かすAの瞳が目に見えて大きくなる。驚いた顔なのにやけにキラキラしていて、想像以上の反応に思わず松本は「ふはっ」と笑ってしまう。
「美味しい！ すごいね松本氏！ めっちゃ美味しい！！」
「そうでしょうそうでしょう」
沸き上がるオーディエンスに答えるように両手を上げた松本が、「いやだから松本氏ってやめろ」と何度目かのツッコミを入れた。
「ほんとに美味しい、おいひい」
「そりゃ良かった」
「松本さんはマジで料理上手なんだね、彼女さんも幸せだよね」
「――え」
「ん？」
美味しいものを食べて、特になにも考えずに喋ったけれど。
目の前の松本が変な顔で動きを止めたので、Aももぐもぐと口を動かしたまま「？」となる。何かおかしな事言ったかな？ と自分の言葉を思い出して反芻して――
「ごめん！！ 大きなお世話だった！！」
「え、あ、いや‥‥っていうか知ってた？」
「知ってたもなにもたまに週刊誌で。って、そうかあーゆーのって嘘も多いよねきっと、ごめん！ 鵜呑みにしてたわけじゃないけど、そうかなーって」
「‥‥まぁ、うん」
歯切れの悪い松本に、やっちまったとAは思う。
何も考えていなかったとはいえ巨大な失言である。ましてや出所が週刊誌。きっと嫌な思いだって沢山してきただろうに、そんな話を持ち出してしまった自分の迂闊さを呪う。
折角美味しいものを食べていたのにめっちゃ微妙な空気！ 失敗した！ と内心で慌てふためいた。
その上目の前の松本はそれっきり黙ってしまったので、自分が一体どんな地雷を踏みぬいたのかAにはわからない。そもそも恋人の話題が地雷なんてこれっぽっちも思っていなかった。
だが、松本のプライベートなことなど、よく考えなくてもきっとすべて地雷と言えば地雷である。
自分の浅はかさにAが恥ずかしさすら覚えて――
(――思い出した、そうだ昼間あのまま返事してなかった)
彼女さん、という単語につられて忘れていたことを思い出す。
松本がここに来た理由も想像がついて。
(もしかして返事しなかったから会いに来たってこと？ まさかいくらなんでもそりゃ無い無い)
打ち消して、Aはそっと松本を見つめる。
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お塩(プロフ) - ゆぃさん» ゆぃさん、一気読み疲れないですか？今後どんどん長くなる上に、どんどん何なのこの人たちってなるので(笑)ありがとうございますー！ (2021年10月3日 19時) (
レス) id: c86e5730cc (このIDを非表示/違反報告)
ゆぃ(プロフ) - 小出しもいいけど、一気に読めると尚嬉しいから 一気に出しても大丈夫ですよ~♪ (2021年10月3日 13時) (レス) @page29 id: 7a81be16ec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：お塩
| 作成日時：2021年9月29日 1時
