＊ ページ41
「別れるための準備期間にするつもりもないから」
「潤」
「あっちとこっちで超遠距離になったって、今は色々文明の利器があんですよ。そりゃすぐに触れあえないのはデカいけど、俺はお前を離さない。だからA、俺から離れようとか考えないで」
「潤、私、辞めようって思って‥‥」
「は？ え？ なにを？ 待って、俺は嫌だよ？」
慌てふためく潤の腕を取ってAは深呼吸をした。
今ならしっかり伝えられる気がする。
潤がAを離さないと言ったから。Aにも潤から離れるなと言ってくれたから。
「さっき、あの、同僚に迫られてた時はっきりわかったの。私、潤のこと仕事と天秤になんて掛けられないって。潤の傍に居たいから、会社をや――」
「A」
ふにっと唇に感触。
それは潤の人差し指だった。
驚いて彼を見つめると、彼はにっこり微笑んで首を横に振った。
「A、行って来いよニューヨーク」
「え‥」
「お前の長年の夢を諦めてほしくない。俺のために自分のキャリアを潰すんじゃなくって、飛び込めよアメリカに」
「だって、三年も‥‥」
「あのね、今何時代だと思ってんの。船しかなかった明治でも無いし、飛行機でひと眠りすりゃ着くし、さっきも言ったけど色んな文明の利器があるんだよ。駆使して、それでもどうしようもなくなったら会いに行くから」
「‥っ潤」
とめどなく零れ落ちるAの涙を潤の親指が拭っていく。
泣き虫だなっていとおしそうに笑われて、また胸が苦しくなった。
「俺は別れたくないから遠距離になっても良いし、Aはそのうえで仕事をきっちりやり遂げて来いよ。一生もんだぞ？」
「良いのかな、私そんな我儘で‥」
「我儘じゃないだろ。自分の夢は自分で掴まなきゃなんねぇし、人生だって切り開くしかないだろ？」
「うん‥‥潤、ありがとう」
「こちらこそありがとうA」
その言葉に疑問を覚えるよりも先にAはキスをされていた。
啄むようなそれは徐々に深くなり、抱きしめる潤の腕にも力が籠り、Aはそんな彼の背に腕を回して与えられる快感に眉を寄せた。
やがて二人の身体はソファに倒れこんでいく。
そこからは恋人たちの逢瀬の時間で、誰にも邪魔はできない。
「ニューヨークってさ、俺のあこがれの街なの。行くの楽しみだわ」
久し振りの触れあい後の気だるさに甘い吐息を漏らすAに潤が意味深な笑みを浮かべたことを、彼女は知らない。
『未完』
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お塩(プロフ) - ゆぃさん» ありがとうございます！って、ゆぃさんまで何を仰る！(笑)私ニューヨーク行ったことないので‥‥(笑)でもタイムズ・スクエア前に立たせるだけで絵になる潤くんですよね、それを見たいです(笑) (2021年9月28日 11時) (
レス) id: c86e5730cc (このIDを非表示/違反報告)
ゆぃ(プロフ) - 完結お疲れ様でした~ NY編…いいです~♪ (2021年9月27日 13時) (レス) id: 7a81be16ec (このIDを非表示/違反報告)
お塩(プロフ) - さちこさん» さちこさんコメントありがとうございます！ほんっと格好いいですよね見事に落ちました(笑)全曲は流石に書けませんでした、そこまでネタが思いつかなくて‥。えっ、NY番外編っ！？えっそんなそんな(笑)でも少し妄想しちゃいました、タイムズスクエアの二人ですね成程！ (2021年9月25日 21時) (レス) id: bdf4956e41 (このIDを非表示/違反報告)
さちこ(プロフ) - お塩さん、完結おめでとうございます！こちらのお話も大好きです♪untitled、ほんとカッコいいですよねぇ…全曲のお話書かれるのかと勝手に思ってたので、完結って見て「えぇ( ﾟДﾟ)」ってなっちゃいました(笑) NY番外編、気が向いたらお願いします(笑) (2021年9月25日 8時) (レス) id: 037683b6b9 (このIDを非表示/違反報告)
お塩(プロフ) - ゆぃさん» ゆぃさん返事遅くなってすみません！！ 同僚はものの見事に当てウマですほんとすみませんって気分になりつつ、あれはもう潤くんのイケイケ具合を楽しんで頂ければオッケーです！！ ね、どう思ったんでしょうかね‥(笑) (2021年8月28日 2時) (レス) id: bdf4956e41 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：お塩
| 作成日時：2021年8月11日 4時
