Green Light ページ29
「小宮山くん、ちょっと」
部長に呼ばれ、Aはパソコンから顔を上げた。
理由は解っているし、彼が何を話すかも解っている。
いい加減腹を決めなきゃいけないということも、嫌と言うほどに。
けれど、彼女は迷っていた。
以前ならば、一も二もなく頷いたであろうその話は、Aがずっと待ち望んでいたこと。
(‥‥馬鹿ね、すっかり怖気づいて)
その先に踏み出すこと、頷くこと、そうすればずっと欲しかったものを得られる。
けれど、きっと失ってしまう。
その喪失に耐えられるのか解らない。
「こちらとしても調整しているが、本部は後三日待つと言っている。小宮山くん、君のキャリアとしても申し分ない話だとは思っているが、どうだい気持ちは固まったかな？」
「部長、本当にありがとうございます。‥‥私、受けようと思っています」
「！ そうか、そうかそうか、良かった」
そう言って笑った部長は、安心した表情だった。そして、Aを見つめる瞳は優しい。
初老の彼は、Aが入社した時からずっと上司で、いつでも気にかけてくれていた。人望厚く、人情厚く、今回の話もAがずっと本社の仕事に関わり合いたいと頑張ってきたことを知っていたからこその処遇で、彼には感謝しかない。
「詳し話は追ってするとして、私は本社に連絡を入れておくよ。小宮山くん、頑張ってくれよ」
「はい！ ご期待に添えられるように精進します」
そうして一人になった廊下で張りつめていた呼吸を吐き出す。
決めてしまった。
足を踏み出してしまった。
もう戻れない。
けれどきっと、選ぶ道はこれだけだとAは解っている。
ずっとずっとこのチャンスを待っていた。
この仕事に就いてから、その前からずっと、本社で働くことを夢見てきた。それを目標にしてきた。
だから毎週仕事上がりに英会話に通い続けてきたし、業務上必要な英単語も必死で覚えてきた。
本社はアメリカにあって、今回はその本社ラボへの栄転。
行かない理由が無い。
だけど、そのために失うものは――
(‥‥潤)
今は外されている薬指の指輪の後を辿ると、途端溢れてくるのは彼の笑顔。
出会ってから、まだ一年にも満たないのに、すっかり彼の虜になって傍に居たくて、こんなにも好きになったのに。
(だけど、私は‥‥)
自分のために、この夢だけは諦めきれない。
(そう、たとえ潤を失ったとしても)
拳を強く握りしめる。
前を見据えて、明るいラボの廊下の向こうをじっと見据えた。
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お塩(プロフ) - ゆぃさん» ありがとうございます！って、ゆぃさんまで何を仰る！(笑)私ニューヨーク行ったことないので‥‥(笑)でもタイムズ・スクエア前に立たせるだけで絵になる潤くんですよね、それを見たいです(笑) (2021年9月28日 11時) (
レス) id: c86e5730cc (このIDを非表示/違反報告)
ゆぃ(プロフ) - 完結お疲れ様でした~ NY編…いいです~♪ (2021年9月27日 13時) (レス) id: 7a81be16ec (このIDを非表示/違反報告)
お塩(プロフ) - さちこさん» さちこさんコメントありがとうございます！ほんっと格好いいですよね見事に落ちました(笑)全曲は流石に書けませんでした、そこまでネタが思いつかなくて‥。えっ、NY番外編っ！？えっそんなそんな(笑)でも少し妄想しちゃいました、タイムズスクエアの二人ですね成程！ (2021年9月25日 21時) (レス) id: bdf4956e41 (このIDを非表示/違反報告)
さちこ(プロフ) - お塩さん、完結おめでとうございます！こちらのお話も大好きです♪untitled、ほんとカッコいいですよねぇ…全曲のお話書かれるのかと勝手に思ってたので、完結って見て「えぇ( ﾟДﾟ)」ってなっちゃいました(笑) NY番外編、気が向いたらお願いします(笑) (2021年9月25日 8時) (レス) id: 037683b6b9 (このIDを非表示/違反報告)
お塩(プロフ) - ゆぃさん» ゆぃさん返事遅くなってすみません！！ 同僚はものの見事に当てウマですほんとすみませんって気分になりつつ、あれはもう潤くんのイケイケ具合を楽しんで頂ければオッケーです！！ ね、どう思ったんでしょうかね‥(笑) (2021年8月28日 2時) (レス) id: bdf4956e41 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：お塩
| 作成日時：2021年8月11日 4時
