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2月の終わりの、雨の日。
Aがいつもより二本早い電車で出勤したのは、雨の日の混雑に巻き込まれたくなかったから。
けれど同じ考えの人間がごまんといるから結局通勤電車は混んでいて、Aは濡れた傘をうっとうしく思った。
けれど出社したその先で待ち構えていた現実に、戸惑った。
天秤にかける必要もないと思っているけれど、だけど―――
今夜もフロアは賑わって、久しぶりに潤たちのパフォーマンスを見ているのに、Aの心はどこかそぞろだ。
ここにいる人たちは敏いからきっと気付かれてしまう。
Aはそっと目を伏せた。
(‥‥まだ、まだ大丈夫)
今夜はあの女王様はいないのだろうか。雨の夜にわざわざ出歩かないのかもしれない。
ステージを降りた潤がまっすぐ向かってくるのが見えて、胸が震える。
やっぱり好きだと思う。
不安が渦巻くのは、好きだからだと。潤にどんどん夢中になっているからだとAは自分に言い聞かす。
手に光る指輪が確かな証なのに。
「A」
惚けたような笑顔でAの名を呼ぶこの人から、彼女は離れられない。
鼓動が、好きだって叫んでいる。
潤の力強く大きな瞳で見つめられれば時が止まる気がする。
キスをされればそれだけで、世界に二人きりと錯覚する。
薬指の指輪を確かめるように撫でて、潤がそのまま手を重ねて握ってくるから、その汗ばんだあたたかさにAの胸がいっぱいになる。
「どうだった？」
「めちゃくちゃ格好良かった。でも相変わらず攻めたダンスと歌詞だね」
「ふふ、ドキドキした？」
「した」
「俺の『Sugar』はAだよ」
「‥‥はっ、はずかし」
「うっせ」
Aの頬に熱が集まる。乱暴な口調に潤も照れているのだと解ると、余計に恥ずかしさが増す。
いい大人が中学生みたいに甘酸っぱい衝動に駆られているのが、嬉しいような。
感情を隠すように俯くAを許さない男らしい指が、顎を捉えて上向かせて、とんっと触れるだけのキスをくれるから。
すぐにいっぱいにしてほしくなる、ほしがりな自分を笑う。
だけど、潤もきっと同じ気持ちだから二人で寄り添って店を後にする。
今夜はタクシーで帰ろうって、雨の中一つの傘に収まって、他には誰も要らない二人の世界。
それを見つめている嫉妬に燃える瞳に、二人は気づきもしなかった。
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お塩(プロフ) - ゆぃさん» ありがとうございます！って、ゆぃさんまで何を仰る！(笑)私ニューヨーク行ったことないので‥‥(笑)でもタイムズ・スクエア前に立たせるだけで絵になる潤くんですよね、それを見たいです(笑) (2021年9月28日 11時) (
レス) id: c86e5730cc (このIDを非表示/違反報告)
ゆぃ(プロフ) - 完結お疲れ様でした~ NY編…いいです~♪ (2021年9月27日 13時) (レス) id: 7a81be16ec (このIDを非表示/違反報告)
お塩(プロフ) - さちこさん» さちこさんコメントありがとうございます！ほんっと格好いいですよね見事に落ちました(笑)全曲は流石に書けませんでした、そこまでネタが思いつかなくて‥。えっ、NY番外編っ！？えっそんなそんな(笑)でも少し妄想しちゃいました、タイムズスクエアの二人ですね成程！ (2021年9月25日 21時) (レス) id: bdf4956e41 (このIDを非表示/違反報告)
さちこ(プロフ) - お塩さん、完結おめでとうございます！こちらのお話も大好きです♪untitled、ほんとカッコいいですよねぇ…全曲のお話書かれるのかと勝手に思ってたので、完結って見て「えぇ( ﾟДﾟ)」ってなっちゃいました(笑) NY番外編、気が向いたらお願いします(笑) (2021年9月25日 8時) (レス) id: 037683b6b9 (このIDを非表示/違反報告)
お塩(プロフ) - ゆぃさん» ゆぃさん返事遅くなってすみません！！ 同僚はものの見事に当てウマですほんとすみませんって気分になりつつ、あれはもう潤くんのイケイケ具合を楽しんで頂ければオッケーです！！ ね、どう思ったんでしょうかね‥(笑) (2021年8月28日 2時) (レス) id: bdf4956e41 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：お塩
| 作成日時：2021年8月11日 4時
