＊ ページ3
「んっ‥んぅ‥ふぁっ‥‥」
「ちょ、おま、そんな声出すなって」
「だだだって出ちゃうんだからしょうがないじゃん！！」
付き合いたての彼女の初めて聞くちょっと色っぽい声に、健全な肉体に健全な精神が宿っている男子高校生が反応しないわけがない。
思わずテントを張りそうな自分の股間を心配しつつAに食って掛かる潤に、彼女も負けじと返す。
「そもそもっ、潤がいきなり、し、し、舌入れるから！」
「いっ、いきなりじゃねぇよ、ずっとそうしたいって思って！――あ」
「お、お、思ってた、の‥？」
突然の告白に顔を真っ赤にしたAが上目遣いで見上げてくるから堪らない。
隠しようがなく兆し始めている己をどうにか諫めて、頭の中で一生懸命萎えることを想像するが、想像よりも目の前のAの存在感が凄すぎて潤はめまいを覚えた。
思わず前のめりで近づく。
Aが真っ赤な顔のまま涙目でほんのちょっと後ずさる仕草に、煽られる。
自分の中にこんないじめっ子みたいな感覚があるなんて思いもせずに、ただただ目の前で可愛い反応をする彼女を追い詰めたくて仕方なくて、潤は知らず口の端を持ち上げていた。
「その笑顔怖いんだけどっ！」
「だってたまんねぇもん、なぁもう一回キスしていい？」
「しししらないっ」
「そ？ じゃあ好きにするわ」
「は、はぁ！？ っ！！」
顔を隠すようにクロスさせていたAの両腕を取る。
何度も掴んだことがあるのに、思っている以上に細い手首に、男と女の体格差を思い知ってまた潤の胸がぎゅうっと一杯になる。
顔を曝け出させて、困ったように恥ずかしそうに、だけど期待を滲ませたその目から、視線を反らせない。
潤が顔をちょっと斜めにして近づけると、観念したように瞳を閉じたAが唇が触れる直前小さく呟いた。
――潤、優しくキスして
(殺す気か、それとも俺に殺されたい？)
それはもう健全な肉体と精神が交錯する不健全な妄想でいっぱいになってしまう。
掴んでいた手首を優しく開放して、今度はお互いの指を絡めて緩く握り合う。
そんな不安定な接触で、あとは唇だけではふはふとお互いの吐息を奪い合うように絡み合ってくっついて、離れられない。
ディープキスがこんなに気持ちいいなんて二人は初めて知った。
恥ずかしいけど、止まらない。
喘ぐような呼吸も吐息も、勝手に熱くなる身体も全部全部、恥ずかしくて泣きそうで叫び出したくなって――
ただただ目の前のこの人が愛しい。
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作者名：お塩
| 作成日時：2021年8月7日 0時
