くのに ページ3
「・・広い」
思わず感嘆の声を上げた。
決して春雨で私に分け与えられた部屋が狭かったわけではない。
しかし、やはり広いのは、ここが昔鳳仙が自分の家とし住んでいたからだろう。
入り口と、その中２、３階までは遊郭なのだが、その上からはだだっ広い屋敷。
宴会場やら、闘技場やら、風呂やらトイレやら・・。
その一室に、私たちはひとつづつ部屋を分け与えられ、今日から三日過ごす。
勿論、窓は開けられるし部屋から外にも出られる。
何者かが侵入してくることだって可能であるわけだから、私が出て行くことだってできる。
ベランダから下を見下ろせば、飛び降りられない距離でもない。
・
「・・私が逃げる可能性とか、考えてないわけ？」
こんなところですら、酒も飲まずに分け与えられた自室にこもり、書類作業に慎む阿伏兎。
そんな阿伏兎の部屋を訪れたのは、つい数分前のことだ。
私のそんな質問に、阿伏兎は鼻を鳴らした。
「今更だろって団長がな」
困ったもんだぜ、と首をすくめる阿伏兎。
阿伏兎としては、春雨の情報を沢山持っている私を逃がしてしまえば、第七師団はそれこそ終わりになる故、警備を怠りたくないとのことらしい。
・・普通、そういうこと本人に言わないよね。
「ま、嬢ちゃんも言われてただろ、団長に」
「何をよ」
「――信じてるってな」
それ以来、黙りこくった阿伏兎に私もまた口を閉ざした。
ズキズキと胸が痛む。
私がここを出れば、春雨を――・・神威を裏切ることになる。
(って、私はもともとここの人間でしょ)
裏切るも裏切らないもない。
書面上は第七師団であっても、私は地球の忍びだ。
くるりと踵を返せば、阿伏兎は「ゆっくり休めよ」と。
こちらを見向きもせず言った彼がほんの一瞬、頭と重なって見えた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 92人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
神阿(プロフ) - shiyuさん» 楽しんでいただけたようでとっても嬉しいです！ありがとうございました！ (2016年7月31日 21時) (
レス) id: d25d67767d (このIDを非表示/違反報告)
shiyu(プロフ) - ダイヤモンド・プリンセスとこの作品を読ませていただきました！後評価もさせていただきました(^^) とってもとっても面白かったです…！！ (2016年7月31日 2時) (レス) id: aae2baa091 (このIDを非表示/違反報告)
真昼(プロフ) - はい！いいご返事期待してます！頑張って下さいね！p(^_^)q (2016年5月6日 22時) (レス) id: 193a3f96c8 (このIDを非表示/違反報告)
神阿(プロフ) - 真昼さん» 検討させていただきますね！ありがとうございます！ (2016年5月5日 22時) (レス) id: 3a209594c6 (このIDを非表示/違反報告)
真昼(プロフ) - 最終話？見ました！楽しかったです！その後が、気になります！続編書いて欲しいです！ (2016年5月3日 11時) (レス) id: 193a3f96c8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：神阿 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kamiamatome/
作成日時：2016年4月18日 20時
