【刀剣乱舞】呑気に気ままに【審神者】 (ページ3)

今日:4 hit、昨日:3 hit、合計:11,935 hit

「ろうれつな男＊燭台切」ページ3

まさに今、
光忠は「呆れてものも言えない」という言葉がぴったり当てはまる思いをしていた。

場所は演練場。己の鍛え上げた刀剣達を戦わせる場所であり、唯一自分と相手の力量の差を見せつけられる格好の場だった。

普段の光忠にとって、演練場はとてもためになる場所、という括りで纏められている。

勝っても負けても格好よくきまればそれに越したことはないが、相手から戦術を学べることが何よりも嬉しかった。

歴史を守るために。

僕だけじゃなくて、主と仲間と。

その気持ちがどの刀剣より強い光忠は、今回の演練も気合を入れて出たのであった。

しかし一回目の試合を終えて「さあ次に行こうか！」と意気揚々に言う自分の声を対戦相手側の審神者が妨げたことにより、状況は一変した。

その審神者は出っ張った腹が目立つ中年男性で、流れる汗をハンカチも使わず袖で拭う仕草を繰り返す、あまりいけ好かない男だ。

第一声の「いやあお強いですね」を言い終えた後、主と光忠達を舐め回すように見る彼の目は、なんとも言えない不気味さがあった。

「なあに？もう、気分悪いなあ」とあからさまに嫌そうな顔でそう言い放つ乱の口を、骨喰が慌てて両手で塞ぐ。

その流れで「なにか用ですか」と宗三が主を背に隠し前へ出た。

「いやいやあ、そう警戒しないで。貴方達がお強いもんだから話をしたくなりまして、ほんと、こっちは圧倒されっぱなしで。いやあ、若いのに凄いですね」

男の口調は次第にねっとりと不愉快なものに変わっていった。彼の率いる刀剣達は皆、ああまたか、というように顔を歪ませ黙り込んでいる。

しかし男はそんなのお構い無しに次から次へ矢継ぎ早に言葉を繋いだ。

「わたしは初期の頃からこの業界にいましてね、今と昔じゃかってが違うんですよ。この演練場なんてもっと狭かったんですよ！」

主はいつもの様に笑顔で大きな相槌を打つ。男が話を振れば一応こたえはするものの自分から話そうとはしない。

それに先程から主が妙だ。

面白いものをみつけるのか、たまに顔をより一層綻ばせている。
それが光忠にとって不思議で仕方がなかった。

「それでねえ、最近の若い奴らは自体を軽く考えているんですよ。戦争中ですよ戦争中！なのに商店街へ行ったり現世へ里帰りなんて甘ったれてると思うんです」

うんうん、と頷き掛けて主はふと真顔になった。今までずっと笑顔だった分、その能面のような顔に、男もその刀剣達も背筋がぞくっとした。