【黒子のバスケ】君の隣でもう一度 (ページ8)

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七輪ページ8

真由ちゃんの言葉に一つの確信を持つ

やはり彼の妹だ

「もしかして、お兄さん、緑間真太郎って名前？」

動揺しているのがばれないように、
今までどうりのトーンで話す

「はい…。もしかしてお兄ちゃんの友達ですか？」

(友達…ね……)

一瞬迷った

ここで「友人だ」と言ってしまえば、
彼女はきっと彼に言うだろう

ピアノ教室でお兄ちゃんの友達に会った、と

それだけは避けなくてはいけない

もう私は彼に会いたくない

あの澄んでいた瞳が濁っているのを見たくない

「…ううん、私が一方的に知っているだけ。
　お兄さん、バスケで有名人でしょ？」

有名人

あながち間違いではない

彼は「キセキの世代」と呼ばれる一人だ

ファンなんだとでも思ってくれるだろう

「お兄ちゃんのファンなんですか？」

私の思った通りの反応する真由ちゃん

単純っていうか、素直っていうか

苦笑する

「まあ、そんなところ」

「そうなんですか…。
　でもあまりいいものじゃないですよ」

そう言い切った真由ちゃんは悲しげな瞳をしていた

「どうしてそう思うの…？」

「……だってお兄ちゃん、
　楽しくなさそうなんですもん」

「そうなの…？」

私の言葉に彼女は小さく頷いた

「昔はすごく楽しそうで、
　お兄ちゃん無愛想なんですけど、
　バスケしてる時は表情筋が緩んでたっていうか…」

「そうなんだ…」

私の記憶の中にいる彼はいつも
気難しそうな顔をしている

でもまだ才能が開花する前は、楽しそうだったとは思う

「…いきなりすみません。
　こんな話しちゃって」

真由ちゃんは困ったように微笑んだ

憂いを帯びている瞳がとても悲しげに揺れていた