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四十四輪 ページ45

「真奈−!!」


奈津美が卒業証書の入った黒い筒を高々と上げて私の名を呼ぶ


その隣には穏やかに笑う琴音の姿も


瞳が充血しているところを見ると、式の最中に泣いていたようだ


「真奈、卒業お互いにおめでと」


「うん、お互いにおめでとう」


ふわりと暖かい風が私たちの間を通った


「…もう卒業だねー…」


琴音が感慨深げに呟いた


その言葉に頷いた後、空を仰ぐ


この帝光中学校に入学してきた時と同じような澄んだ青い空


「…いろいろあったけどさ、楽しかったよね!」


奈津美がしんみりとした空気を変えるように明るい声色で言った


そんな彼女がさっき式で号泣していたことを私は知っている


「でもさ、なんだかんだでみんな一緒の高校だし!また三年間よろしくね!」


真奈もね、と琴音が優しく微笑む


そう、私は奈津美や琴音と同じく誠凛高校に行くことを選択したのだ


彼女たちに伝えたのは受験が終わってからだけど


その時に一緒に推薦を辞退したことも伝えた


二人ともとても複雑そうな顔をしていた


嬉しいような、嬉しくないような


喜んでいいのか、喜んではいけないのか


そんな表情だった


自分の意思でこうすることを選んだのだと言うと彼女たちはやっと笑顔になってくれた


『真奈が選んだことならきっと大丈夫だよ』


そう言って笑ってくれた琴音に涙が溢れそうになった


何も言わずに私の肩を叩いて、それから優しく抱きしめてくれた奈津美に感謝したいって思った


私は良い友人に巡り合えたと心底思っている


「ねぇ、二人とも」


楽しげに話す二人に声をかける


ありがとう


ありがとう


何も理由を聞かずにそばにいてくれて


自分の中で整理がついたらちゃんと話すから


「これからも迷惑かけるかもしれないけどさ、よろしくね?」


私に言葉に二人は一瞬顔を見合わせたかと思うと同時に吹き出した


「当ったり前じゃん!」


そう花が咲いたように笑う奈津美


「こちらこそよろしくね、真奈」


暖かな日の光のような柔らかい笑みを浮かべる琴音


「じゃあ行こっか」


三人並んで学校を出る


ピンク色に小さく膨らんだ桜が風に乗ってふわりと揺れた

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作者名:ルナ | 作成日時:2014年6月28日 16時

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