三十五輪 ページ36
あれから数週間
私と緑間は話せずにいる
違うクラスと言っても隣のクラスだから廊下ですれ違ったりする
でもお互い知らんふり
声をかけることはおろか、目も合わせようとしない
それが一番堪えた
緑間はもう私のことなんてどうでもいいんだろうな
日に日に増えていく不安、焦り
表面上はいつも通り振る舞っていても心の中では今にも崩れてしまいそうだった
「真奈?大丈夫?なんかぼーっとしてる」
前の席に座っている奈津美が心配そうに顔を覗き込む
「…大丈夫。ちょっと考え事してた」
「そう?なら良いんだけど…。あ、まさか進路のこと?」
奈津美の言葉に私は無言で頷いた
担任の先生との面談の後、秀徳高校の資料に目を通してみたり、知人の
お世辞にも校舎が綺麗とは言い難いものの、歴史を感じさせるその趣に悪くはないな、と思った
一応、推薦の話が来るようなら受けてみようとは心の中で決めた
「でも真奈は推薦でしょ?いいよなー、頭がいいって得だよね」
パクリと効果音が付きそうな感じで奈津美はから揚げを頬張った
「なっちゃんは誠凛だっけ?」
隣でいちごミルクを飲みながら琴音は言った
「うん、そのつもり。一個上の先輩に誘われてさ。新設校だから校舎も綺麗だし。琴音もでしょ?」
「え、そうなの?」
初めて聞いた内容に驚きを隠せない
「あー…。まだ決定ってわけじゃないよ?私立の女子校とも迷ってるし」
「女子校選ぶあたり、琴音らしいよね。公立は受けないの?」
私のその言葉に琴音は少し俯きながら言った
「親は公立にしろってうるさいんだけどね。特にお母さんが…」
琴音のお母さんには何回か会ったことがある
長い髪を一括りに結い上げて、黒縁の眼鏡をかけているその女性は見るからに教育ママだった
琴音のお母さんは琴音が美術に打ち込んでいるのを快く思っていないらしい
悲しそうに眉を下げながら相談してきた琴音を思い出す
「…正直どうなるか分かんないって感じだよ」
苦笑いする琴音の頭をそっと撫でる
受験はみんなそれぞれ大変なんだなって改めて感じた
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作者名:ルナ | 作成日時:2014年6月28日 16時