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二十三輪 ページ24

「緑間!」


朝のHRも終わり、教室を出ようとしている彼に声をかける


足を止め、こちらを振り返る彼に駆け寄る


「どうしたのだよ」


呆れたように言いながら、私の言葉を待つ


「ありがとう」


彼の目をまっすぐ見ながら言う


若干驚いたように目を見開く姿が滑稽で吹き出しそうになる


「何なのだよ、いきなり」


「伴奏、代わってくれたでしょう?だから」


そう


結局あの後、緑間が自由曲の伴奏もやることでその場は収まった


申し訳ない気持ちが頭を占領していたおかげで、その時にお礼が言えなかったのだ


「別に、礼を言われることでもないのだよ」


「でも」


「礼を言うくらいなら、なぜあの時に伴奏はできないと言わなかった」


痛いところを容赦なくついていくる


「いや…本当に大丈夫だったの」


「こんなに腫れているのにか?」


苦し紛れの言い訳を即緑間がぶった切る


「いや、本当に平気だったの。…それより、いつの間に練習したの?」


これ以上ほじくられないように話題を変える


「…俺は人事を尽くしたまでだ」


「いや、答えになってないけど」


眼鏡を片手でそっぽを向く彼の耳は心なしか赤い


「ちょ、何で赤くなるのよ」


漫画の女の子ならかわいく頬を赤らめるのだろうけど、私にそんな器用なことはできない


「な、赤くなってなどいないのだよ」


慌てて否定する姿が面白くて思わず吹き出す


「笑う要素がどこにあるのだよ」


じろりと睨んではいるものの、その声色は優しい


「別に!」


そう言ってまたふふっと笑う


「はあ、まったく」


そう言い残して彼は廊下を歩き出そうとした


「ねぇ!」


それを慌てて引き止める


「お礼!させてよ」


「は?」


「だから、お礼!」


「別にいいのだよ」


「私が良くないの!」


助けてもらったのにお礼なしなどいけない


物を返せばいいというものでもないけれど


なかなか折れない私に緑間は観念したように言った


「放課後、正門で待ってろ」


それだけ言い残すと彼は足早に廊下を歩いていった

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作者名:ルナ | 作成日時:2014年6月28日 16時

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