二輪 ページ3
お母さんに頼まれたものを買いに近所のスーパーへと来た
放課後の時間だからかやけに学生が多い
買い物かごを取り、店内へと進む
頼まれたものを確認するため、
スマホを起動させる
(人参、ジャガイモ、玉ねぎ…)
ありきたりな名前に、今日の夕飯はカレーだな、と推測する
(ってことは数日カレーが続くってことね…)
私のお母さんは料理は上手いけれど、
作る量が半端じゃない
大家族の一員として生まれたお母さんはどうやら人と量の間隔がずれているようなのだ
小さくため息を漏らす
「げっ。ここもないのかよ…」
不意に近くで声が聞こえる
声のするほうへ視線を移すとそこにいたのは
黒髪の顔の整った男の子
黒い学ラン
(秀徳高校の制服…)
飲料コーナーの目の前でがっくりと肩を落とす姿が不憫に思えて、気が付いたら声をかけていた
「あの、どうかしましたか…?」
いきなり声をかけられたのに驚いたのか、
黒髪の彼は少し目を見開きながらこちらを見た
「あ、このスーパーってお汁粉売ってないんですかね?」
人懐っこさそうに笑みを浮かべる彼は、少し困った表情をしていた
「…お汁粉、ですか?」
怪訝そうに問い返す私に彼は慌てて言った。
「いや、俺じゃないっすよ?
しんちゃ…、友人がどうしても飲むって聞かなくて…。
やっぱ、おかしいですよねー。
今時お汁粉なんて。高校生が飲むもんじゃないですよね」
ケラケラと笑う彼を尻目に、私の脳裏ではある人物が浮かんだ
緑色の髪に、翡翠色の瞳をした彼…
(まさかね…)
過った残像を消して、目の前にいる彼に応える
「ここのスーパーにはないですけど、
駅前のスーパーにならあったと思います」
昔の記憶を手繰り寄せて言う
「ほんとですか!?」
瞳をキラキラさせながら言う彼が眩しい
「いやー…良かった!
なかったらやばいんですよ!」
ペラペラと流暢に話す彼が面白くて、不覚にの頬が緩む
「良かったらご案内しましょうか?」
いつもならこんなこと言わないのに、
言ってしまったというのはきっと彼の人柄ゆえだろうし、
また彼の友人に興味を抱いたからだろう
私の言葉に彼は首を振った
「いや、それは悪いっすよ。場所だけ教えてもらえれば」
「ふふ、大丈夫ですよ。
私も駅前に用事があるし、何より駅前と言っても
小さい駅で分かりにくいと思いますよ」
そう言い微笑みかけると彼は渋々頷いた
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作者名:ルナ | 作成日時:2014年6月28日 16時