３８話 ページ39
─エースside─
「ふがっ、...あ？おれ部屋で寝たか？」
目が覚めたら自分の部屋に居た。外は若干明るい。もうすぐ夜明けだ。
甲板にいたはずなのに、と上体を起こしてやっと左手が誰かに握られていることに気付いた。
見ればノースがベッドに頭だけ預けて寝てる。いつもは...今まではおれが起きれば絶対起きてたのに、その気配もない。
何でベッドで寝ないんだコイツは、身体痛くなんだろーが。仕方ねェな。
ひょいっ
「あ！？軽っ！！」
『ん"ぅ...』
「おい、くっつくなよ...」
抱き上げた時の軽さに驚いた。あんなに酒も飲んで飯も食ってたのに片手で簡単に持ち上げられる。これで海軍本部の中将やってんのか、能力なしの実力だけで。
布団に入れてやれば唸りながらくっついてくる。うるさいってか、こんにゃろう。それにしても昨日からやけに引っ付き虫だな。
相変わらず、冷てェ。
物心ついた頃はまだ子供体温だったはずだ。ルフィに会う頃にはもう能力者だった。
ノースは自分の事を何も話さない、拗ねない、怒らない、泣かない。感情の起伏が小さくて表情が乏しい。
そのくせ笑顔だけは作るのが上手かった。心からの笑顔がなかった訳じゃねェけど、物分かりが良すぎる。
おれの知るノースはそんな子供だった。おれとは正反対でホントに双子なのかダダンの奴がずっと疑ってたな。
感情的になる所なんか一回も見たことねェけど、後にも先にもノースの泣きそうな表情を見たのは初めておれが冷たいノースの体温に触れた時だけだ。
「寒いの苦手なくせに...」
ばさっ
起きるにはまだ早い時間だ。どうせ二日酔いで倒れてる奴らがたくさんいんだ、二度寝してもヘーキだろ。
多分オヤジに言われて部屋に戻ったんだ。それならノースがここで寝てても誰も文句言わねェし、おれが寝ててもノースがいるから怒鳴り起こしたりはしねェはず。
再会してすぐにぶん殴ったけど、裏切られたと思ったのはおれの前から消えたその日だけで何か理由があると思ってた。
おれの唯一の理解者だ。何があってもおれのそばに居てくれて味方で居てくれた。今もきっと変わってない。
そんな存在が急に消えてみろ、驚くし混乱するし、少しは悲しいし寂しいもんだ。
絶対ノースにだけは言ってやらねェ。また好きだなんだの言ってくるに決まってる。昔からド直球で伝えてくんだ。噓を吐かねェ奴だって知ってるから余計にこっちは恥ずかしいってのに。
おれは言葉にするのは苦手なんだよ。
▽
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 8人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：えると。 | 作成日時：2022年9月2日 22時
