３６話 ページ37
─ノースside─
甲板にいるほとんどのクルーが寝落ちてる。起きてるのは私とオヤジさんだけ。
エースの寝顔をじっくり見た後でお土産のお酒をオヤジさんの所に持って行く。
随分と機嫌が良いように見える。オヤジさんも今夜の宴を楽しんでくれたんだと思うと私も嬉しい。
正面に立って酒壺を掲げて見せる。私からしたら等身大だしめちゃくちゃ重たい。
『お注ぎしても？』
「あァ...美味ェんだろうなァ？」
『もちろんです。オヤジさんにつまらないもの贈ったりしませんよ』
差し出された杯にトポトポ注ぐ。一杯で壺の四分の一くらい減った。このサイズで四杯分なのまじか。もっと持ってくれば良かったな。
少し軽くなった壺を揺らしていればオヤジさんは杯を口元まで持っていって香りを確かめてる。もしや香りでダメなら飲んですら貰えない？このお酒結構苦労したんだけどな。
飲んで欲しいなーって期待しながら見つめてれば鼻で笑われたけどゴクゴク飲んでくれて一安心。
「ンな顔すんじゃねェ。娘からの贈り物だぜ、おれが無下にする訳ねェだろうがァ」
『オヤジさん私のこと信用しすぎですよ。毒でも入ってたらどーするんです？』
「おめェはそんなくだらねェことしねェと分かってっからなァ。おれを殺すつもりなら正面からくる」
『んー、そりゃそーですけどね。あ、お酒どーです？』
「悪かねェ...こいつァ作んのに苦労したんじゃねェか？」
『わはは、やっぱ分かりますか。結構苦労しましたよー、でもエースのオヤジさんに渡すなら上等なものにしたかったので』
仕事の合間に調べては作って調整してやっとこさ出来上がった。自分でも満足のいく出来になったから良かった。
何か贈り物というかお礼の品というかを考えた時に真っ先に思い付いたのがお酒で。ただこの世界にあるものなら大抵のお酒は飲んだことあるんじゃないかと思ったから、なら絶対に飲んだことないお酒を持って行こうと思った訳ですよ。
褒めてもらえたし大満足。
酒壺をオヤジさんの足元に置いて、礼をしてから下がれば視界が揺れた。身体が傾くのを感じていると次の瞬間にはぐわっと上がった。
どうやらオヤジさんの膝の上に乗せられたらしい。いや、高すぎじゃない？
『...オヤジさん？』
「心配させんじゃねェよバカ娘。...息子共と同じ場で寝る気か？エースの部屋使え」
『やです。一緒に寝たいんで』
「じゃあエースも連れてけ。温かくして寝ろよ」
『はーい。おやすみなさい〜』
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作者名：えると。 | 作成日時：2022年9月2日 22時
