三十九話 ページ41
「_つまり。キノコは植物性ものが大半なんだけれど、とにかく、僕は何とか増殖するやり方を知りたい」
目の前でキノコについて熱弁しているジェイドに適当に相槌を打つと同時に、のしっと全身に重みがやってきた。見なくても分かる。フロイドだ。俺の頭のてっぺんに頭を乗せて一緒に熱く語るジェイドをめんどくさそうに見つめていた。
そろそろいいかな、と思ったところでジェイドの会話を悪いが割り込ませてもらう。
「あーわかった、わかった。シイタケの飯でも作ってくれフロイド」
「ねぇ、ジェイドの話にシイタケ一言も出てこなかったよ」
こちらに湿った目線を投げかけてくるフロイドを無視すると、Aは、はぁと軽く息を吐いた。
実際のところ、今日がVDCの本戦当日だ。
一応、それ相応の努力はしたものの、やはり緊張してしまう。ガッチガチに緊張した俺を気遣ってか、アズールさんが「時間が来るまでフロイドの相手をしてやってくれませんか?」と学園祭の散策とついでに相手を頼まれた。まぁ、そのおかげで少しは緊張がほぐれているのだが。
ちなみに、ここはジェイドのサークルだ。メンバー1名。本人曰く「山を愛する会」部長。特に山の珍しい写真を貼っている訳でもなく、展示物も極端に少ないこのサークルは、やはり人が興味を湧くはずもないのか、ほとんどジェイドの趣味の楽園となっている。
「そう言えば、Aさん。貴方、ネージュさんとかもでる個人戦に出るんですよね、勝てる自信とかあるんですか?」
不意にそう聞かれたが、正直言って、ない。第一にネージュさんとやらの声を聞いたことないし、他の学校の生徒だってかなりの実力者なはずだ。そんな中で転生者の俺が勝てるはずもないし、実際に歌は練習したものの、プロレベルのヴィルさんとかには見てもらっていないから、本番直前まで俺の評価は分からない。
返答しようとした途端、
「お邪魔するよ」
という声と共に、赤髪、薄く灰色がかかった淡い瞳。男子高校生にしては童顔の人物がヒールの音をカツカツと警戒するように鳴らして入って来た。
「あっ、金魚ちゃ〜ん」
フロイドがその人物に向かって手をヒラヒラと振る。フロイドの顔を見た途端、げっとその人は顔を小さく歪ませた。
「お久しぶりです、リドルさん」
俺が声をかけると、リドルは一瞬こちらを見た後「ああ、君か」と答えた切り、ジェイドにサークルの調子はどうか尋ねていった。
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レオ - とっても面白いです。続きが気になります。 (1月4日 8時) (レス) @page48 id: 8c9a5c91e3 (このIDを非表示/違反報告)
夕闇柳 - たまたま30話見ていてカリムがカルムになっていました。 (11月25日 8時) (レス) @page31 id: a9dd4c9262 (このIDを非表示/違反報告)
ウイ(プロフ) - ふぎょあ、完結されてるんですね…この作品、めちゃ好きです。まだ占ツクにログインしてなかった頃、読みまくってました笑 ねっとり様に届くか分かりませんが、更新、お疲れ様でした。ほんとに本当にこの作品がこれからも大好きです!!!!!! (6月26日 7時) (レス) @page48 id: 154e73901c (このIDを非表示/違反報告)
ねっとり - 雨中猫さん» アカウントを作っていなので急遽この形ですが作者です。コメントありがとうございます。「命に嫌われている」素敵ですよね、番外編でも他の歌とかも書いてみたいので気長に待ってくれると嬉しいです (2022年2月5日 23時) (レス) id: ad0790befa (このIDを非表示/違反報告)
雨中猫 - 主人公ちゃんに命に嫌われている歌ってもらいたいです! (2022年2月4日 19時) (レス) @page27 id: 79b86edfa1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ねっとり | 作成日時:2022年1月20日 16時