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「…本当に何でもないです。昔を思い返して苦しくなっただけで」
忘れようと努めてきたものが、どろりと湧き上がる。
薄めていたと思っていた黒い感情は底に沈殿していただけで、私はその上澄みを人前に晒していたらしい。
何故かここにきて優しさの鱗片を見せる五条さんが沈殿物をかき混ぜる。私のことが大嫌いなはずなのに。今までぞんざいにされて来たのに。どういう心積りなのか。
「本当にあの人を殺したんですか。傑は死んだんですか」
攻めている訳でも、疑っている訳でもない。ただの事実確認。一緒に暮らすことになったあの日も聞いたけれど、まだ私の心は真実を拒絶している。
震える唇を噛んで目を合わせると、またかと言わんばかりに五条さんはため息をついて、でもきちんと答えを出してくれた。
「そう。僕がこの手で、去年の12月24日に呪殺した」
「本当に？」
「は？」
「本当に息絶えたんですね」
「…そうだけど」
不審そうに蒼眼を細められて、「それならいいです、すみません」とまた床に目を落とす。
昨日見たあれはなんだったのか、また振り出しに戻る。偽物というには余りに本人に寄りすぎていて、本物と言うにはどこか他人。第一死んだはずの人間が生きている訳が無い。呪詛師にはその辺の禁忌を犯すなど容易いのかもしれないが。
五条さんの六眼なら全て分かるのかもしれない。けれど彼と故意に接触するなど不可能に近い。恐らくずっと身を隠しているだろうから。
ぐしゃりと自分の髪を掴む。私が確信を持てたところで、一人では何も出来ないんだ。
それどころか最悪にも、どこかで安堵している自分が居る。
彼に逢えたことに。
「あの日と同じ交差点…」
無意識に呟いて、後悔した。
あの場所が私にとってどんな場所か理解した上で、昨日あの人は接触してきたのだろうか。
だとしたら、あんまりじゃないか。私が受け入れきっていないことを利用してくるなんて。
「ねぇ、本当に何かあったん――― 」
「私、本当に弱いんです。五条さんの言う通りなんです」
………泣くな。泣いて何になる。
自分にそう言い聞かせても、涙が落ちてしまう。
こんなにも私は無力だっただろうか。
窓の外の日差しは明るく、それでも先程夢で見た時よりも僅かに優しい気がする。窓から舞い込む風の中で婚約者が瞳を揺らしていたことに、俯いた私は気付かない。
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ユシュケ(ユコ)(プロフ) - まめさん» ありがとうございます〜！すごくすごく久しぶりにまた更新しましたのでまた読んでやってください✩ (2022年12月20日 1時) (
レス) @page48 id: cf63eb9bb2 (このIDを非表示/違反報告)
まめ(プロフ) - ずっとずっと待ってました！すごくすごく久しぶりに開いたら通知が来ていたので嬉しすぎました泣また頑張ってください！応援してますー！ (2022年9月25日 21時) (レス) @page47 id: 3de5d823fb (このIDを非表示/違反報告)
ユシュケ(ユコ)(プロフ) - 妃さん» こちらこそありがとうございます！！時間が経ってしまいましたがまた読んでいただけると嬉しいです♡ (2022年9月4日 1時) (レス) id: cf63eb9bb2 (このIDを非表示/違反報告)
ユシュケ(ユコ)(プロフ) - chiaki0708さん» オリジナル要素多すぎて読みにくいかな…？と思っていたのでそれを聞けて嬉しいです！すこ~しずつまた更新していくのでよろしくお願いします！ (2022年9月4日 1時) (レス) id: cf63eb9bb2 (このIDを非表示/違反報告)
ユシュケ(ユコ)(プロフ) - はるきちさん» ありがとうございます！ちょこちょこ再稼働し始めたのでまたよろしくお願いします…！！ (2022年9月4日 1時) (レス) @page47 id: cf63eb9bb2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ユコ | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/oorsayui/
作成日時：2021年3月18日 11時
