22 ページ22
.
「A、」
傍に駆け寄ると、彼女は全身から出血をしていた。
硝子に治療してもらおうと声を掛けると、帳を解除した補助監督が慌ただしく走ってきた。
「君たち無事祓い終えたんだね、よかった………その子達は?」
「巻き込まれた一般人と、それを護っていた呪術師です」
「呪術師…?まだ中学生かそこらじゃないのか?」
「てかそういうアンタは今の今までどこに居たんすか???」
補助監督にメンチを切る悟を仕方なく止める。
彼女が何故、急にあれだけの出力で呪術を発揮できるようになったのか、あの御守りとの関連はあるのか、分からないことだらけだ。
でも1つ確実に言えるのは。
「…立派な呪術師ですよ、Aは」
蠅頭すら祓うのを躊躇していたあの時とは全く違う目をしていた。
きっかけは今日だったのかもしれないけれど、呪術を使うことに明確な意思が感じられた。信念のようなものが。
硝子に呼ばれて治療されているAの側へ行くと、帳の外にいた女性が近付いてきた。
補助監督が間に入るも、何食わぬ顔でAの鞄を拾いつつこちらへ歩いてくる。
「…随分と派手にやったわね、この子は」
屈んでAの腹部に手を添える。
動揺するような雰囲気はなく、どちらかと言うと困ったように笑っていた。
「呪力はまだ不安定ね、急だったから仕方ないか…あら、あなた反転術式使えるの?」
「え?まあ、そうですけど」
「聞いていた通り今年の1年は優秀なのね、ありがとう」
高専の事情について詳しい。関係者のようだ。
夜蛾先生より少し若いくらいに見えるが、補助監督も知らないとなると窓か元呪術師といったあたりか。
よし、と発したその女性は、血塗れのAを気にすることなく背負った。
治療がまだだと硝子が止めるが、有無を言わせない笑顔を見せる。
「後は家でするから大丈夫よ。でもあなた達が居なかったらAは死んでいたわ。礼を言うわね」
「…あなたは誰です?」
一方的に正体を知られているというのはあまり良い気分ではない。
その問いも女性はニコリと笑って躱すと前髪が揺れ、隠れていた右目が現れた。
澄んだ左目と白く濁った右目でしっかりとこちらを捉える。
「名乗るほどでもないよ。ただの元関係者だからね」
「そうは言っても…」
「じゃあ行くね、一応この子死にかけだし。
あ、…夜蛾くんによろしくってだけ伝えといて?」
そう言い残し、近くに止めてあった車に乗り込んで行ってしまった。
.
492人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ユコ(プロフ) - 緑の白猫さん» 展開スピードは自分の中で1番心配していた所なので、そう言っていただけて嬉しいです!ありがとうございます (2021年3月1日 21時) (レス) id: cf63eb9bb2 (このIDを非表示/違反報告)
緑の白猫 - 展開やストーリー構成が急展開過ぎず、読んでいてとても心地良かったです。 (2021年3月1日 15時) (レス) id: 41276e8159 (このIDを非表示/違反報告)
ユコ(プロフ) - 五条と夏油はイニシャル一緒さん» ありがとうございます!私もげとーさん好きなので頑張りますね^^ (2021年1月24日 7時) (レス) id: cf63eb9bb2 (このIDを非表示/違反報告)
五条と夏油はイニシャル一緒 - 面白いですー!夏油さん好きなので嬉しいです、応援してます! (2021年1月24日 1時) (レス) id: f43ac37e04 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ユコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/oorsayui/
作成日時:2021年1月19日 12時