百六拾八、無意味なもの ページ18
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丁度、頭上の曇天から、同じ色の水が落ちてくる
さっきまで田安だったそれと私の上にもそれは優しく降り注いで、お互いの紅を滲ませる
暫くして、それに背を向けて歩き出した
「………帰っていいって言ったのに」
銀「傘忘れた女を置いて帰れるかよ」
「あんたも忘れてたでしょうよ」
銀「うっせえ」
パトカーの前に佇む銀時の天然パーマは、雨に濡れて癖が薄くなっていた
「ねえ」
彼の前で立ち止まり、手と刀を巻き固めた解けかけの布切れを見つめる
「今、すごく苦しい。
あいつを、兄上を討ったあの男を殺せば、何かしら残ると思っていた。信じていた。
けど」
けれど、今の私には
「…何も残らない。何も得られなかった。
………いや、“無”を得たって言うか」
私の中には、今、何も無い
仇討ちを成した達成感とか、満足とか、そんなものさえ起こらない
では私は何のためにあいつを斬った?仇討ち?兄上を斬ったお返しの?何で?だって何をしても
「
布切れが解け、刀がカシャンと音を立てて濡れた地面に落ちる
「この仇討ちは_____無意味なものだったの?」
その問いを、かつて兄上と同じ場所で同じ景色を見ていた侍に投げかける
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作者名:ユコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/oorsayui/
作成日時:2018年3月27日 3時