俺らの幼なじみは天才じゃない (ページ22)

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天才じゃない23 ページ22

研磨side

知らなかった。
そんなことを考えたこともなかった。

きっとその苦しみをずっとひとりで抱えて、隠して、『いつもの』Aを生きてきたなんて。

俺はAに思いを全部伝えた。

みんなAのことが大切だと。

みんなAのことが大好きだと。

すると必死に堪えていたであろう涙がコンクリートに落ちる。

「ごめ、ん…あと、ちょっと……した、ら…元のっ…わた、しに……もど、る…か」

ぷつん、とAの動きが止まった。

やばい。

Aの身体を抱き上げて俺の家まで走る。

こんなところで泣かれたら大変だ。

Aのことがバレてしまう。

すぐそこの俺の家に「ただいま。」と言うと、そのまま自分の部屋へ急いだ。
そして部屋に着く。

が、Aは泣かなかった。

必死に口元に手を当てて泣き声を抑えていた。

きっと今泣いたら俺が困ると思ったんだろう。
俺はAの頭を優しく撫でる。

「もう、大丈夫だよ。」

そう言うと、Aは抑えていた手を離すと「うぇぇぇぇぇん！！！」と泣き始めた。
ずっと我慢していた、その分まで。

「けん、ま…てつ、にー…ま、ま…ぱ、ぱ……みん、な、すき…。
で、も……ひっぐ…めー、わく…かけ…てる…わた、し…いっちゃ、だめ…。いわれ、ちゃ…だめ…！！
き、らいは…いいた、くな、い…けど…わた、し…いっ、ちゃ……だめっ……！！」

「なんで？」

「ひっぐ…めー、わく…いっぱ、い……ごめっ、なさ…い。めーわ、く…だ、め。
やく、たた…な、い。ひっぐ……すき、にわた、し…なに、も……か、えせ…ないっ……！！

わ、た…し…いきて、る…かち……ないっ！！」

ようやくわかった。

Aはクロに『好き』と言われて嬉しいと思ったから。
そう思っていた。

それは『ある意味では』合っていた。

ただ、心の底までは違かった。

『自分は迷惑ばかりかけているから』

『好きと言えない』

『言ってはいけない』

『役に立たないから』

『何も返せないから』

『生きてる価値がない』

そんな、悲しいことをずっと、ずっと思ってたんだね。

苦しいことを抱えてたんだね。

小さな『こども』はうるさくならないように、声を抑えて泣いている。

それはきっと、『これ以上』迷惑をかけたくないから。

胡座をかいて、小さな『こども』を真ん中に乗せる。

そして語りかける。

「ねえA。俺のお話も聞いてくれる？」

Aはこくりと頷いた。