になな ページ28
全員が探索をすることになって私がまず始めにしたのは、死体を観察するでも、凶器を探すでもなく、顔を洗いに行く、ということだった。
そりゃあいくら私でも死体を見てしまったら気が動転するし、なにより。
『…ミサキちゃん。』
ミサキちゃんが心配だったから。
ミサキ「…琴乃ちゃん。
ごめんな、ちょっと取り乱しちゃって。
もうすぐ、私も探索してみるから…。」
ミホさんの遺体の第一発見者だからだろうか。
それとも、みんなと仲よくしたがっていたからか。
あの場に居た誰よりもショックを受けていたし、今だって顔色が悪い。
『無理しないでいいんだよ、ミサキちゃん。
探索は私たちに任せて、ミサキちゃんは休んでて!』
ミサキ「で、でも…。」
『だいじょぶだいじょぶ!適材適所ってヤツだよ!』
ミサキ「そっか…。
じゃあ、お言葉に、甘えようかな…。」
『うん!じゃあミサキちゃん、背後には気を付けて!』
本来の目的だったはずが、顔も洗わず、ミサキちゃんに別れを告げてシャワールームを出た。
ミサキちゃんを見て、ほんの少しだけ、昔の事を思い出して、しまったから。
こんな私でも、人の役に立てることって、あるの?
少しでも、考えてしまったから。
『……はは。』
乾いた笑みが溢れた。
『…らしくないって。
私は、人気者の、柚木琴乃ちゃん、なんだよ。』
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作者名:ハチミツころっけ | 作成日時:2024年3月15日 16時