黒猫7 ページ9
「こんな奴とやってられっかよ」
「こんな奴マフィアにいれるなんて…」
中也が彼女に聞こえるのも厭わず悪態をつく。
当の本人は気にせずに跳ねるように歩いている。
「うっふふ。私、生まれて初めての任務ですのよ。今まで誰かの下になんてついたことないですもの」
中也が眉間に皺を寄せてガニ股で歩き、話しかけるなと言わんばかりにずんずん歩いていく。
負けじとねぇねぇねぇ、と着いていき話しかける黒猫。
あれは話したいと言うより中也が苛々するのを楽しんでいるようだ。
中也が苛々するのは大いに結構、寧ろ嬉しいが黒猫が楽しそうなのは若干腹が立つ。
「…中也さんは平均より身長がお低いけれど、何か原因が？」
核心(仮)を突かれて中也はカッと黒猫の方を睨む。
私はあまりの滑稽さにぷ、と吹き出してしまった。
「あぁ？手前、もっぺん云ってみろ」
「年齢の割には身長が低いけれど如何して？と聞いたのですわ。ほら、私と背比べしましょ？」
そう云いぴとっと中也の背中に彼女の背中を合わせる黒猫。本当だ、彼女の方が高い。
確かに彼女は随分と分厚い靴底の靴を履いていて、中也に不利と云ったら不利なのだけれど。
「お前のこの靴がずりぃンだよ！脱げ！」
「嫌だわ、脱げなんてそんな。順序というものがあるでしょう？でも…中也さんなら…」
「うげっ…きっしょくわりぃ…」
「酷い、私これでも美人と評判ですのよ？」
本気でげんなりとした顔をした中也と対照的にコロコロと笑っている黒猫。
「…楽しむのも結構だが、任務の話もしたい。良いかい？」
「…勿論、よろしくてよ」
「今回の任務は裏切り組織への報復。マフィアの武器を横流しにしている不届き者がいてね。正直欠伸が出そうな任務だが黒猫もいるし初任務にはお誂え向きだろうね」
書類を片手に黒猫には一瞥もくれず淡々と語る。
「作戦は…一応決めておこう。黒猫、異能はあるか？」
あるに決まってる、とは解っておきながらも一応訊ねる。
黒猫はぴくりと動いて一瞬足を止める。
「…如何した？」
「いえ…。嗚呼、異能ですけれど持ってますわ。ただ、どんな異能かは秘密、ということで」
彼女が少し妖しげに口の両端を吊り上げ目を細める。
「今回の任務、私1人に任せて頂けますか？」
柔らかい口調で彼女が訊ねる。
有無を云わせない雰囲気に中也がつい、『あ、ああ…』なんて莫迦みたいに返答をしてしまった。
…お手並み拝見、と行こうか。
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作者名：まるてん x他1人 | 作成日時：2018年8月2日 10時
