8話 ページ9
和「こんにちは」
貴「…っこんにちは」
和「ふふ。久しぶりだね、緊張してる？」
不安を与えないようにしてくれているのか優しい声で話しかけてくれる
貴「少しだけ、」
声を絞り出しているかのようにだんだんと小さくなっていく声、
和「大丈夫？少しお話しする？」
こんなに気を配ってくれるのに私の声は蚊の鳴く声よりも小さくなっていった。
貴「…っ、」
和「んー、じゃあ今日は気分を変えてベッドに座ろうか」
貴「うん」
和「俺もAの隣に座っていい？」
小さく頷くとすぐにベッドの軋む音が耳に届き、それだけで隣に座ったんだとわかった。
和「ちょっとごめんね、触るよ」
そういうと先生の手は私の手首に触れそっと掴むと脈をはかり始めた。
和「最近どう？」
手首に少しの圧迫を感じながら先生の問いかけに答える。
貴「…発作が少し多くなった気がする」
和「そうなの？どのタイミングでとか分かる？」
貴「夜中とか…、あとは朝もたまに息苦しくなって咳が止まらなくなる」
和「そっかそっか、できるだけ負担はかけたくないけど検査はしておきたいな」
貴「…ん、いいよ」
和「じゃあ明日いい？翔先生の診察のあとに入れようか」
貴「はい」
先生は私に確認をとると掴んでいた手首そっと離し、それと同時にベッドから離れパソコンで明日の検査の予約を取りはじめた。
和「この後は皮膚科だっけ？」
貴「そう」
和「じゃあここで待ってて。先生呼んでくるから」
貴「いやいいよ、和先生忙しいでしょ」
和「真っ青な顔して何言ってるの。俺のことは大丈夫、だからちょっと待ってて」
貴「…ごめん」
和「大丈夫よー」
先生にも顔色悪いって言われるなんて相当なのかな。
診察室からでも聞こえる廊下に響く足音は和先生のだ。トコトコと小走りに急ぐ音、靴が大きいのかたまに ”きゅっ” 床に擦れる音が鳴る。
急に止んだと思えば千尋と軽く話しているんだろう。はっきりした言葉は聞こえないけど二人の声は分かる。千尋の小さく笑う声、先生のからかうような優しい声。どっちも聞いてるだけで温かな気持ちになる音だから自然と眠気もやってくる。
病院に着いてからは胃液がのぼってくるような感覚を必死に抑えていたこともあって知らない間に疲れ始めてたんだろうなぁ。…少しだけ横になってもいいかな。少しだけ。
そう思いつつも眠気には勝てず、私はそのまま意識を手放した。
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空蝉(プロフ) - naoさん» ご指摘ありがとうございます。すぐに直させていただきました。 (2020年2月3日 21時) (
レス) id: 94fcae9fee (このIDを非表示/違反報告)
nao(プロフ) - 登場人物のところの紹介の友人の所が桜井のって全部なってるけど、桜木の間違いですよね。 (2020年2月3日 2時) (レス) id: 3ab06130a8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：空蝉 | 作成日時：2020年1月27日 22時
