13話 智side ページ14
千「…先生は苦しくないの？」
智「苦しいよ。僕の力不足で救えなかった人もいた。暴言だって吐かれるし」
千「それでも続けるの？」
智「…そうだね、でも苦しいのはみんな一緒だからね。どこへ逃がしたらいいのかわからない感情をみんな捨てきれずにいるだけなんだよ」
千「…そっか、みんな苦しい思いをしてるのか」
智「でもそんな人たちを救える力をもってるのは俺だけじゃないよ」
智「今Aちゃんを支えているのは僕じゃなくて千尋だ」
千「…そんなわけないじゃん」
智「でも僕がAちゃんと接してる時間よりも千尋がそばにいる時間のほうが長いでしょ」
千「まぁそうだけど、」
智「それにAちゃんはあまり僕に会いたがらないんだ」
千「え、本当に？」
智「うん、晃くんと診察にきたときはいつも僕との時間を入れてみるんだけど本人が会いたくないっていうんだ」
千「…じゃあAは今も一人で苦しんでるの？」
智「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない」
千「え、どういうこと？」
智「あの事故からもう4年が経つ」
千「Aの両親が亡くなった事故？」
智「そう。彼女は自分の感情に蓋をしたのか誰かに助けを求めているのか、僕にはわからないけど1つ言えることは事故にあってから今まで精神的な発作が大きく出たことはないってこと」
千「…っ、」
智「千尋、これからはAをよく見ていてほしい」
千「っ、俺にできるかな」
智「大丈夫、僕もそばにいるから」
苦しそうな顔をする千尋。
ごめんね、そんな思いをさせて…
千「…また話にきてもいい？」
消え入りそうな声で僕を呼ぶ。
智「いつでもおいで」
千「ありがとう」
智「…でも1つ約束して。絶対に無理はしないこと」
千「うん、分かった」
智「何かあったらちゃんと僕や晃くんに伝えてほしい。僕ら大人は君たちを守る責任があるからね」
千「うん、それは守る」
智「ふふふ、ありがとう。あまり長いすると風邪ひいちゃうからそろそろAちゃんのところに戻ろうか」
千「はーい」
冷たくなった白衣を手に取り千尋の背中に手を置いた。
Aの事故があってからとっくに大人の世界に入ったはずなのに撫でる背中はまだ子供のように小さかった。
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空蝉(プロフ) - naoさん» ご指摘ありがとうございます。すぐに直させていただきました。 (2020年2月3日 21時) (
レス) id: 94fcae9fee (このIDを非表示/違反報告)
nao(プロフ) - 登場人物のところの紹介の友人の所が桜井のって全部なってるけど、桜木の間違いですよね。 (2020年2月3日 2時) (レス) id: 3ab06130a8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：空蝉 | 作成日時：2020年1月27日 22時
