見せない涙 (ページ13)

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誰のためページ13

彼等の思いも本気さもひしひしと伝わって来た。だからかな。力を貸して上げたいと思ってしまった。

『……力を貸すって、何をすれば良いの？』
「先生を……ファウスト先生を助けて欲しいんです」
『ファウスト先生……？』
「俺達の仲間だ。死に掛けてる。あんたが居れば助けられるかも知れない」
『死に掛けてるって。どうして？』
「仲間を庇って深傷を負ったんです」
「……ファウスト先生は、俺がお世話になった先生なんです……。先生が居なかったら、俺だって死んでた……」

死に掛けている仲間。何度もヒースクリフの言葉から出て居た、ファウストと言う人物。無理をしてまでも助けたい人物。赤く染まっていくヒースクリフの瞼に。ああ、そのファウストと呼ばれた魔法使いは彼にとってどうしようもない程の大切な人なんだと理解する。

「……っ。お願いです……。どうか、先生を助けて下さい」

悲痛な声音で悲願するヒースクリフへ向けて。私は頷く。

『分かった。私に出来る事があるのであれば』

ぱっとヒースクリフの表情に安堵と笑顔が浮かぶ。びっくりする程のあどけないく純粋な笑顔。

「ありがとうございます。賢者様……」
「待て！魔法使い共め！賢者を渡しはせぬぞ……！」

その時、先程の老男と気弱そうな青年が大声を上げて階段から降りて来た。そして、老男は私を視界へ入れるなり叱りつける様な大声で言った。

「賢者様！騙されてはいけません！魔法使い共は、良い加減で嘘付きです！躊躇いも無く人を騙すし、不思議な力で心を操ります！魔法使い共を信じてはなりません！」

私は、3人の方へ振り返る。カインは眉を顰めて、ヒースクリフは何処か傷付いた表情をして居た。しかし、シャイロックだけは笑っていた。

「私達が正直者だとしたら、貴方は嘘を仰った事になります。貴方の言う、良い加減な嘘吐きと同じ」
「私は国の為に仕えて居るのだ！不真面目なお前達とは違う！」
「お黙りになって。ドラモンド様。貴方は、私達に話し掛けて居るつもりでしょうが、本当は私達と対話する気は無いのです。貴方の言葉から伝わるのは、貴方が私達の事を余り好きでは無いということだけ。貴方は、私達が話す事が真実だとしても信じないでしょうし。私達が嘘を付けばほっとするでしょう。貴方は貴方の嫌いな私達が嘘吐きだと信じたいから。ならば、真実と嘘に意味はありますか？」