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普通は、霊感があろうがなかろうが命の危険を感じれば、人は酷く怯えた困惑する。けれど、彼女からはそんな感情がいっさい感じられない。
「どうした?」
声が聞こえる方へ振り返れば、ナルが扉の前で佇んでいた。
「……」
何も口を開かない私をナルは不審そうな表情を浮かべる。
「何があった?」
いつも冷たく温度のない声音がほんのり和らぎ、もう一度彼女へ問いかける。そんな彼に、私は一度、黒田さんへ視線を向けたのち、ナルの方へ視線を向けた。そして、先ほどの黒田のことの一件を話し始めた。
全ての話を聞き終えて、ナルは黒田さんの方へ視線を向けた。
「……それは、いつ頃?」
「さっきよ」
「ビデオを再生してみよう。場所は?」
「二階の廊下……」
ナルは、黒田から襲われた場所を聞き出した。そして、慣れた手付きで精密な機械を起動させるとビデオを再生させた。黒田の言うとおり、二階の廊下に設置したカメラに黒田は映っていた。しかし、なぜだか。黒田が階段へ登り上がろうとしたところでモニターが謎の砂嵐に見舞われた。
『……カメラの故障ですか?』
「……他のものに異常はないな。カメラが壊れているはずもない。意味深だな」
『……どういう意味でしょうか?』
「霊が現れると、えてして機械は正常に作動しなくなる。これは……どっちだろう。霊か電波障害か。あるいは……」
ナルは、そこまで言いかけて黒田の方へ視線を向けた。
「声がしたといったね。それは、どんな?」
「かすれてたけど……女の子の声だったと思うわ」
『……原さんは、霊はいないって言ってましたけどね』
「原さんて、本当に霊感あるのかしら」
「女性の霊媒というのは、好・不調の波が激しいのがふつうだ。彼女の才能は、信用できると思ったんだが。……それとも、ここに霊がいたとしても、その霊は君とひどく波長があるのかもしれない」
「……そうかもね……」
否定的だったナルから、そんな言葉が聞けるとは思っていなかった黒田は、嬉しそうな表情を浮かべる。けれども、私は。『本当に……くだらない茶番。馬鹿馬鹿しい』そんな、黒田を冷めた視線で向けていた。
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クジラ大好きマン(プロフ) - 柏餅さん» お返事が遅くなりすみません! コメントありがとうございます! (2月18日 23時) (レス) id: 774fe7f9f6 (このIDを非表示/違反報告)
柏餅 - 神すぎます! (12月29日 20時) (レス) id: c21f6abdfc (このIDを非表示/違反報告)
クジラ大好きマン(プロフ) - hiyoriさん» コメント有難う御座います! (9月8日 20時) (レス) id: 774fe7f9f6 (このIDを非表示/違反報告)
hiyori(プロフ) - 更新ありがとうございます!楽しみにしてます (9月8日 18時) (レス) @page13 id: 45d5329a9e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クジラ大好きマン | 作成日時:2023年9月3日 4時