検索窓
今日:14 hit、昨日:3 hit、合計:6,221 hit

或る爆弾 ページ13

久方振りに嗅ぐ畳の匂い。それと、ほんの少しだけふわりと鼻腔をくすぐる懐かしくも奥ゆかしさのある優しい匂い。眩しい日差しで目が覚めた敦の視界に、まず最初に映り込んだのは見覚えの無い天井。

「ここ、どこだ……」
『……起きた?』
「……蓮ちゃん?」

頭上から覗き込む蓮の姿。

『おはよう。敦』
「お、おはよう……?」

まだ、敦は寝惚けて居るのか辺りを見渡して居た。昨日の事は、あまり覚えて無さそう。まあ、私も眠って居たからあまり事情は知らないだけど。まだ、ぽやぽやしている敦の頭を撫でて寝癖を治して居ると、部屋中に携帯の着信音が鳴り響いた。

「な、何!?」

其処でやっと目が覚めた敦は、慌てた様子で携帯電話を手に取る。『ぼ、釦どれ?』どれを押せば良いのか悩む敦から優しく、携帯を取ると着信を取るボタンを押して、通話に出ると敦へ携帯を返した。『あ、ありがとう』御礼を述べた後、敦はおずおず電話へ出る。

「は、はい?」
「やあ。敦君。新しい下宿寮は、どうだい? 善く眠れた?」
「お蔭様で……。こんな、大層な寮を紹介いただいて」
「それは、好かった。ところで、頼みが有るのだが」
「?」
「助けて。死にそう」

電話越しから聞こえて来る助けを乞う太宰。敦は、一瞬固まるが直ぐに理解すると急いでパジャマから私服へ着替えて、最低限の身なりを整えた後、隣でウトウトと船を漕ぐ蓮の腕を掴むと、急いで家を出た。


急いで家を出た後、所変わって寮の真ん前で冷めた視線でドラム缶の中に治っている太宰を見詰めていた。

「やあ。良く来たね。早速だが、助けて」
「え……何ですか。これ」
「何だと思うね?」
「朝の幻覚?」

蔑む眼差しで太宰を見詰める敦の隣で、蓮はドラム缶の中から出ている太宰の足を突っついて遊んでいた。

「こうした。自 殺方があると聞き、早速試してみたのだ。が、苦しいばかりで一向に死ねない。腹に力を入れてないと徐々に嵌まる。そろそろ限界」
「はあ……でも、自 殺なのでしょう? そのままいけば」
「苦しいのは嫌だ。当然だろ」
「なるほど」

相変わらず何処か太宰はズレてる。そして、太宰の暴論を納得する敦もやはり、何処かズレてる。私と敦は、お互い手を貸し合いながら、ドラム缶の中で嵌っている太宰を助け出した。


太宰をドラム缶から救出した後、敦をとある場所へ連れて行くべく、三人で横浜内を歩いて居た。

「同僚の方に、救援を求めなかったのですか?」

*→←*



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (25 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
52人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

クジラ大好きマン(プロフ) - くらげさん» コメント有難う御座います。拙い文章力ではありますが、褒めて下さり有難う御座います。 (7月29日 20時) (レス) id: 774fe7f9f6 (このIDを非表示/違反報告)
くらげ - 文章が非常にきれいで非常に読むのが楽しかったです。更新楽しみにさせていただきます。暑い日が続いておりますが、どうか御自愛ください。 (7月29日 16時) (レス) @page7 id: fa8f980323 (このIDを非表示/違反報告)
クジラ大好きマン(プロフ) - 七星 麗華@???,??,??さん» イベント参加させて頂きありがとうございます。作品を褒めて頂き有難う御座います! (7月25日 19時) (レス) id: 774fe7f9f6 (このIDを非表示/違反報告)
七星 麗華@???,??,??(プロフ) - イベント参加ありがとうございます!設定からもう神ですね…更新楽しみにしています!体調にはお気をつけてください! (7月25日 19時) (レス) @page3 id: 50853c9852 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:クジラ大好きマン | 作成日時:2023年7月23日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。