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深く被った帽子から覗く彼女の瞳を見た瞬間、ドブはぞくぞくと背筋に悦 びに似た感情が走る。夜空を切り取った様な深い藍色の中で輝く星空を閉じ込めた美しい瞳の鋭い視線がドブに突き刺さる。「なんつーう、魔性の瞳してやがる」彼女の瞳に釘付けになったドブはゴキュと喉を鳴らした。

「それは、お前次第だな」

抱える激情を押さえ込んで平静を装いドブは悪人顔で笑う。蓮の心情を悟ったドブは余裕な笑みを浮かべて、後部座席のドアを開ける。

「じや、交渉成立という事で、くれぐれもよろしく」

タクシーから降りて去っていくドブの背が見えなくなるまで、蓮はずっと眺めて居た。そして、ドブの背が遠くなり見えなくなった頃、私はハンドルに頭を預けて項垂れた。


蓮が運転するタクシーから下車した後、ドブは人知れず、人気の無い公園の木の根の元の土を掘って居た。自身の予め埋めて居た鉄で出来た箱を掘り上げて、箱の蓋を開けると、ドブは先程隠した拳銃を懐から取り出すと箱の中にしまった。そして、拳銃の入った箱をもう一度土の中に入れると箱の上から土を掛けた。誰にも気付かれず悟られない様。出来る限りで土深く隠した。


ハンドルに預けていた頭を上げると「そう言えば、さっき程は、ドブに邪魔されたが白川さんから連絡が来て居たんだ」気付いて、白川さんとのトークアプリを開く。

『今から会えますか?』
『病院の前の公園で待ってます』

メッセージが送られて居たのは、深夜2時。今の時間帯は、朝方の四時。今も、一人白川さんが公園で待っているとすれば、この寒空の下、2時間も公園にいる事になる。蓮は、急いでハンドルをドライブに入れるとハンドブレーキを下ろして、強くアクセルを踏んだ。法定速度を軽く超えて、白川さんの待つ病院前の公園へ急いで向かう。


急いで辿り着いた病院前の公園。私は、車から降りて白川さんの姿を探す。しかし、白川さんの姿は何処にも無い。それもそうか。何たって朝方の4時だし。2時間も寒空の下で待つ馬鹿な動物は居ない。帰ろうと踵を返した時、驚く白川さんの姿が視界に映り込む。

「……来てくれたんだ」
「……私に、何か用事があったの?」

急いで公園へ来た癖して、出て来る言葉は無愛想で冷たい言葉ばかり。しかし、白川さんは私の無愛想な態度を特に気にした様子は無く、優しい微笑みを浮かべた。

「……会いたかったってだけじゃ駄目?」

初めて見る白川さんの優しい瞳と笑顔に、私は何故だか戸惑ってしまった。

 

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作者名:クジラ大好きマン | 作成日時:2023年6月11日 23時

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