85.無責任な優しさ ページ39
大和守.
「兼定、起こさなくていいの？」
「あ、そういえばそうだね。行ってくるよ」
そう言って歩き始めた堀川を角を曲がるまで見送ると素振りを再開しようとしたが骨喰が何故かその場で固まったままで、僕は骨喰の肩に手を置く。
そして声を出さずにビクッと身体を揺らす骨喰。
「どったの」
「いや……なんでも、ない」
「嘘つき」
「！」
僕がそう言うと観念したように溜息を吐く骨喰。
「……少し、落ち込んだだけだ」
「なんで」
「わからない」
「ふーん」
「でも……堀川が主の良さを知ってくれたのは嬉しかった」
……本当に嬉しいのかなぁ、この脇差
桜を散らつかせているけど顔は笑ってないよ。でも目は穏やかで、ただ表情に出すのが下手な奴なのかもしれない。
「でもあの子、無責任だよ？」
「……？」
「誰にでも優しいって無責任なんだよ？」
「そんなこと……っ！」
「あるよ。大あり。だってそうでしょ？誰かを助けるためなら自分の身でさえも簡単に犠牲に出来て、誰かのために何度も泣いて、誰かのために何度も笑って、誰かのために無茶を起こす」
それは誰にでも出来るようで出来ないこと。
人間誰かしら大切な人のためにしか動かなかったり自分の得にしかならない人しか助けない人間もいるけれど、それが一番正しいと僕は思う。
さっきの堀川の言葉だって変だと思った
たしかに主は堀川を助けた。けれどそれは目の前に困っている人がいるからで、別に堀川のことを特別好いているから助けたわけじゃないと思う。
「(なんで一方的に好きになれるんだろ)」
「……でも、それがあいつだ」
「？」
「あいつは無責任なんかじゃない。平等なんだ」
「平等？」
「あいつの優しさにはちゃんと理由がある」
……そういうものなのか？
理由があれば無責任ではないのか？無我夢中のように見えて、実はその理由を解ってやっているのか？そしたらとんだ策士だとは思わないだろうか。
……
それとも、僕の考え方が悪い？
「そろそろ朝餉の時間だ。戻ろう」
「え、もう？」
「兄弟達を起こさなければいけない」
そう言って本丸に戻って行く骨喰。
すると今度は主が欠伸をしながら歩いて来た。
『……あ、おはようございます、大和守さん』
「……おはよう」
まだ眠いのか喋り方がいつもよりゆったりだ。
「……主」
『はい？』
「素振り、付き合ってよ」
『え』
.
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冬雪(プロフ) - たまごやきさん» コメントありがとうございます。毎回題名が変わる小説ですがこれからも読んでいただけると幸いです (2019年6月9日 9時) (
レス) id: 319301ee3c (このIDを非表示/違反報告)
たまごやき - こんにちは。今までコメントしていなかったのですが、いつも作者様の作品を読ませて頂いてます。あんスタの方から読み始めたのですが、どちらもとても引き込まれてしまいとても好きです。これからも作者様のペースで更新してくださると嬉しいです。 (2019年6月9日 9時) (レス) id: 7f42fd7b15 (このIDを非表示/違反報告)
冬雪(プロフ) - 幸別愛友さん» コメントありがとうございます。これからも頑張ります。 (2019年5月25日 15時) (レス) id: 13dcdbbff5 (このIDを非表示/違反報告)
幸別愛友 - すごくいいお話です…(*´^-^`*) その文章能力わけてほしいくらいです…(>д<。) これからも更新頑張って下さい！楽しみにしてます！！ (2019年5月25日 12時) (レス) id: 978af02bfc (このIDを非表示/違反報告)
冬雪(プロフ) - 瑠花さん» 他人が作ってしまうと自分が作った物語が思い通りにいかなくなります。誰も語彙力がないことを馬鹿になんてしませんよ。馬鹿にする方が馬鹿なんですから (2019年5月24日 22時) (レス) id: 13dcdbbff5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：冬雪
| 作成日時：2019年5月20日 21時
