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げっそりとしている翼を、アオが適当に慰める。
「い、いやほら!もしかしたら、善意で血をくれる子とかいるかもよ。翼って、すごいイケメンだし!ほら、ミステリアス系ってやつ?」
ちなみに言っておくと、アオはかわいい系イケメンである。
「いるわけないだろ…というか、人間に吸血鬼だってバレたらダメなんだぞ」
そう、この時は思っていた。
自ら血を差し出す人間などいるはずがないと。
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人間界留学初日、翼とアオは女子の悲鳴に包まれた。
二人は転校生という触れ込みで人間界の学校に編入した。
教壇の前に立った二人は早くも女子をメロメロにしていた。担任の冴えない男性教師が、翼とアオを紹介する。
「えー、二人は●●県からやってきた、的場翼くんと、倉野アオくんという…」
「きゃーーーー!かっこいい!!」
「素敵〜〜!!」
「美しすぎるわ…」
担任がおろおろと止めに入る。
「ちょ、ちょっと皆さん落ち着いて…」
女子は注意されてもきゃあきゃあと騒いでいる。私は翼くん派!などの声が聞こえ、翼は少し寒気がした。
「んだよ、アイツら…」
「ちょっと顔がいいからってよ」
対して、男子からは舌打ちされまくりである。その形相は中々に恐ろしく、翼はさっきとは違う意味で寒気がした。
アオはというとそんなことは全く気にせず、ぴょんと一歩前に出て自己紹介を始めた。
「皆さん、はじめまして!俺は倉野アオって言います。趣味は歌うことと、美味しいものを食べること。得意なことは…運動全般かな?今日からよろしくね!」
ぱちん、とアオがウインクをすると、たちまち女子たちから「かわいい〜!!」と声が上がる。
少数の男子からも「かわいい…」「俺アオくんならいける」などの声が上がったのを聞いてしまい、翼はまた寒気がした。
「じゃあ、的場くんも自己紹介お願いします」
担任に促され、翼はしぶしぶと前に出た。
アオが小声で「ファイト!」と言ってくれたが、翼はもう帰りたくなっていた。
「ま…的場翼です…。趣味は読書です。特技はトマトの早食いです。よろしく…」
翼は俯きながらボソボソとしゃべっただけだったが、女子にはそれが好意的に受け止められたらしい。
「翼くんはミステリアスね…物憂げでステキ」
「読書好きなのね!頭良さそうだもん」
「トマトになりたい…」
しかし翼は、男子受けがかなり悪かった。
「くそ、何がトマトだ。ギャグのつもりか?つまんねぇんだよ」
「スカした面しやがって」
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作者名:ぺぺこ | 作成日時:2019年8月21日 4時