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翼は、自身の認識を改めざるを得なかった。
(人間って…憐れなだけでなく、恐ろしい…)


今日は時間割に家庭科があり、しかもいきなり調理実習だった。
作るのはクリームシチューだ。
翼は家庭科教諭が調理の注意点などを壇上で説明するのを、キャンディ代わりのフ●イチを舐めながら真面目に聞いていた。更に、人間界と魔界の食文化の違いを知ろうとメモ帳に気になった点を書き留めている。翼はけっこう楽しく人間界の授業を受けていた。
ただし、常に女子の視線を感じる。
アオもいるので二分されるが、常に女子の半分ほどがチラチラとこちらを見ているのがわかった。
アオはというと全く女子(と一部男子)の視線など気にせず、ふんふんと感心したように調理器具を眺めていた。翼はその図太さが羨ましくなった。
「では、調理を始めてください」
教諭の合図とともに、生徒は各々動き始めた。とたんに翼と同じ班の女子、果ては違う班の女子までもがわらわらとやってきて翼を囲んだ。
「翼くんは料理得意なの?」
「い、いや…あんまり」
「え〜っ!じゃあ私がとびきりのシチューをご馳走するね!」
「あーズルい!私もっ!私も料理得意なんだよ!」
「転校初日にいきなりの調理実習だったし、翼くんは見てるだけでいいからね!むしろ見ていてくれるとやる気が出るっていうか、翼くんは見ているだけで作業してるようなものよ」
これじゃあ班もクソもないな、と翼がげっそりしていると、男子の恨めしげな視線を背後に感じた。
「クソが」
「トマト野郎」
「イケメンはいいよな。調理しなくても素材のままで綺麗なんだ。俺なんて…」
翼は慌てて言った。
「あっあの、俺、なにか手伝うよ。見てるだけなのは悪いし」
翼が男子たちの視線にビビって何かを手伝おうとした時、別の一人の男子が目に入った。
彼は翼もその周りの女子も気にすることなく、淡々と調理作業を進めていた。
さっぱりと短い髪に、男らしい顔つき。翼やアオほどではないが、彼の顔立ちは整っていた。
翼は、彼なら話せそうだと思って声をかけた。
「なあ、俺に何かやることはある?」
彼は翼の言葉で初めて顔を上げて、特に含みもなく言った。
「じゃあ、鶏肉切ってくれよ。俺は人参とか切ってるから」
「あ、うん」
翼が作業を始めると、班内の他の男子も翼に負けまいと作業を始めた。女子も、肉を切るのに四苦八苦する翼にアドバイスをしつつ、翼に料理得意アピールをするために各々の作業を始めた。

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作者名:ぺぺこ | 作成日時:2019年8月21日 4時

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