*可愛い名前だ ページ8
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ご飯も完食した時、洗い物も終わったのか、外に干しに出ていた女は、台所のシンクに両手をついて深呼吸をしていた。
「(どっか悪いのか)」
引き出しから出した薬を一気に飲んで、もう一度大きく深呼吸をした女は、振り返った。
「食べ終わりました?」
「っ……あぁ、ごちそーさん」
「お粗末さまで……
お口に合って良かったです。」
「美味かったぜ、なかなかな。ご飯の量もちょうど良かった」
「ほんとですか?良かった……
それで、この後は、どうされるんですか?」
食器を片付けながら聞いてきたから、一瞬考えてから
「船に戻る。団長が押し付けた仕事が、まだ残ってっからな」
そう言うと、お盆を持って立ち上がって言った。
「お仕事、程々にされた方がいいですよ?目の下にクマがありましたし、昨日もぐっすりだったし。」
そんな所まで見てやがった……
頭をガシガシとかきながら思うと、小窓を見て言った。
「今なら、日差しもあまり出てませんし、夜兎族のあなたなら、ちょうどいいかもしれません。」
「そうかい。んじゃあ、退散するとしようかねェ」
思わずよいしょと言葉が出ると、女はクスッと笑った。
玄関で靴を履き終わると、俺の番傘を差し出した。
「穴、空いてたので、傘職人の方に直していただきました。」
「悪ぃな、そんな事まで。」
「いえ、そんな。」
昨日までとは違い、綺麗になっている傘を一瞥すると、引き戸を開けて傘を開き、外に出た。
すると、見送りもしてくれるのか、着物の袖を持ち日差しを避けるために、顔の前に持ってきた。
「何から何まで、世話になった。助かったぜ」
「こちらこそ、久しぶりに介抱しました。楽しかったです。」
「そうかぃ。そりゃァ良かった。
んじゃあな」
長居も良くないだろうと、女に背を向け、片手をあげて歩き出すと、少し大きめの声を上げた。
「あの……っ」
「んァ?」
「お名前……お名前、教えてくださいませんか?」
「あぁ、まだ言ってなかったな。
俺ァ、春雨 第七師団副団長の阿伏兎だ。」
「春雨……」
「お前さんは?なんつー名前だ?」
「Aです!桂 A!」
A……ねぇ。
フンっ……いい名前じゃァねぇか
「んじゃあ、またな、Aちゃん」
そう言ってやると、Aはポッと頬を赤く染めた。
「っ……は、はい!阿伏兎さん、お気をつけて!」
阿伏兎 “ さん ” か……
悪くねぇなァ……全く。
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rikohuku0428(プロフ) - 続きのパスワードが知りたいです!面白いのでぜひお願いします! (2020年11月23日 0時) (レス) id: 4dacac16ea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:どこかのムスメ | 作成日時:2018年8月23日 12時