*懐かしい記憶 【あなたside】 ページ44
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「分かるか?Aちゃん」
必死に私を起こそうとしている声が聞こえ、薄ら目を開けると、私の顔を覗き込んでいた阿伏兎さんが視界に映った。
「……阿、伏兎さん、が……いる……
夢、か……」
こんな所に、阿伏兎さんなんて来るはずない……
きっと、まだ私は夢から醒めてないんだ……なんて思ってると、顔を覗きこんでいる人が、泣きそうな顔で
「っ……馬鹿野郎。」
暴言を聞いているも、身体から湧き上がってきた物を吐き出そうと、勢いよく咳をすると同時に出てきたのは、真っ赤な血。
ああ……わたし、もう長くないのかなぁ……
何か叫ぶ声がしたけど、気にせずに再び意識がなくなった。
次に意識を取り戻したのは、シン…とした空気の中、西山の向こう側に、小太兄と神威さんがいる……なんていう場面。
そして、どこか懐かしい思い出が頭をよぎった。
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〜回想〜
「え〜ん……え〜ん……に……っ、にぃ……ヒック……」
小太兄と、松陽先生におつかいを頼まれた私は、市場まで行ったんだけど、あまりの人の多さに思わず繋いでいた手を離してしまい、人の波に押されては弾き出され、路地裏に放り出された。
両膝には、擦り傷が出来上がっていて、着物もヨタヨタ。
まだ幼かったから、不安で堪らなくて泣き叫んでたら、急に影が出来て、上を向くと大きな傘に隠れて顔は見えないものの、頭をガシガシとかく男の人がそこにいた。
「オイオイ。こんな所で、どうした。嬢ちゃん」
「ヒック……にぃに…だぁれ……?」
「俺?俺は……まぁ、通りすがりのお兄さんだ」
「通りすがりの……にぃに?」
「おう。
で?こんな暗い路地裏に、嬢ちゃんはなんで1人でいんだ」
「にぃ……と、ヒック……バイバイしちゃって……ヒック……」
「あー、要するに、迷子か。
……まぁ、あの人の多さじゃ迷子にもなるわな」
「にぃに会いたいよぉぉぉ〜……」
「あっ!ちょっ、な、泣くな!わかった、わかったから!一緒にお兄さん、探してあげるから!」
「ほん……ヒック……とう?……ヒック」
「ああ。声掛けちまった以上、しょうがねぇ。
人探しなんざ、柄に合わねぇが……怪我もしてるみてェだし、軽く治療してから、探すか」
そう言って、一旦傘を畳んで私のことを軽々と持ち上げた、通りすがりのお兄さんは、優しく抱き締めて、再び傘をさすとあの人混みに入った。
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rikohuku0428(プロフ) - 続きのパスワードが知りたいです!面白いのでぜひお願いします! (2020年11月23日 0時) (レス) id: 4dacac16ea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:どこかのムスメ | 作成日時:2018年8月23日 12時