検索窓
今日:5 hit、昨日:4 hit、合計:101,134 hit

夜空と青空の月 ページ45

…まだ空の青色は眠たげにぼやけていて、そこにはうっすらと白い月が浮かんでいた。夜空に輝く月明かりもそれはそれは綺麗だけれど、こうして青空の中に見つける月も、私は好きだった。夜の月は気高く美しく、なんだか私の手にはとても届かないようなものに見えるけれど、青空にある月はなんだか庶民的というか。夜のそれよりも身近にあるもののように見える。まぁ、月というものは私が生きている地球とは遠く離れたところにあるのだから、庶民的に見えるというだけで手が届いて触れられるという訳でもないのだけれど。当たり前のことだ。取り敢えず私が言いたいのは、青空に溶けてしまいそうな白い月が、私は好きだということだ。特に他意はない。

もしかしたら、晋助は私がこうして遥か遠くから見ている月を、もっと近くで見ていたりする可能性もあるのかもしれない。今晋助が率いる鬼兵隊の船が宇宙の何処にあるのか、あるいは宇宙にあるのかすらも分からないけれど、月のクレーターと呼ばれるものが間近に見えるくらいの距離にいるかもしれない。

夜に輝くあの月が、近くで見ると砂と穴だらけの場所なのだということをあまり私は信じられないのだけれど、そんな景色を見て、彼はどんな感想を抱くのだろう。少しだけ気になった。


「…A」

「はぁい?」


と、ゆっくりと歩きながらにそんなことを考えていれば、隣から土方さんの私を呼ぶ声が不意に聞こえてきて、私は空を眺めていた目を彼に向けた。土方さんはタバコを口に咥えたまま私のことを見据えていて、きっと私が空を見ていたときからその視線はこちらを向いていたのだろう。案外自信というものがあまりないらしい彼は、私がぼんやりとしていると、たまになんだか心配そうに、不安そうに私の名前を呼ぶ。

彼は、優しいから。どんなに安心材料を用意したって、どれだけ大丈夫だと告げたって、心配や不安は消えてなくなりはしないのだろう。まったく、もっと自信を持って、強引にでも私の目を彼に向けさせるくらいの気持ちで居てくれなければ困るのに。


私はくすりと少し笑ってから、月がありますよ、と頭上を指差した。


「……そうだな」


私の指の先を追うように、土方さんは青空を見上げて、そこに浮かぶ月を見つけては、そう呟いた。彼のタバコの紫煙が、月を隠したところで、私は前を向いた。街の方に差し掛かれば、仕事に向かうのだろうサラリーマンと思われる男の人があくびをしながら歩いていて、花屋のお姉さんは店先に花を並べては微笑んでいた。

同じ歩幅で→←サイコパス



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (248 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
619人がお気に入り
設定タグ:銀魂 , 土方十四郎 , 真選組、攘夷   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

Karin(プロフ) - この作品が好きすぎてもう4回ぐらい読み返してます。とっても面白くて、感動的で、大好きな作品です!銀魂のedにも使われていた桜音という曲を聴いた時に、この作品の高杉と主人公のことみたいだなぁと感じました。高杉と恋仲だった頃の話も見てみたくなりました笑 (8月4日 19時) (レス) id: 9e7f4b97d1 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - ミウラさん» ありがとうございます!こんなご時世ですので暇をもて余すこともあるかと思いますが、私の作品なんかで良ければ読んでやってください!! (2020年5月9日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
ミウラ(プロフ) - ピピコさん» 嬉しいです!楽しみに待ってます(o^^o)その間ピピコさんの小説何度も読み返しますね笑 (2020年5月9日 21時) (レス) id: 3103cb23ea (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - ミウラさん» ミウラさん!ありがとうございます…!!最後まで読んでくださり感謝です…!!高杉さんが出てくるシーンは本当に難しかったです…自分でも書いててしんどかった…!!高杉さんのお話もそのうち書きたいなぁと思っていますのでお楽しみに(o^−^o) (2020年5月9日 19時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
ミウラ(プロフ) - 一気に全巻読めちゃうくらい面白かったです!晋助様のシーンがしんどすぎてずっと泣いてました…笑次は晋助様落ちの小説も書いて欲しいです! (2020年5月9日 8時) (レス) id: 3103cb23ea (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/  
作成日時:2018年6月14日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。