誰かが居るのは ページ27
『オ、オイ……大丈夫かよ…どっか痛てェのか…?』
『昔と変わらねーよ。お前が俺の背中を護るってんなら、俺はお前の背中を護るだけだ』
『…背負うのなんて、護るのなんて、当たり前だろーが』
『……何年、お前と一緒に居たと思ってんだよ』
『もう無くしたくないんなら、今のうちに掴んどけ』
『──お前はもう、大丈夫だよ』
…いつかの、銀時の声が、何処からか聞こえてくるような気がする。それは、気のせいではない。それらは私の胸の中にある言葉で、その言葉を貰ってから、ずっと私の救いとして存在していた言葉だ。その言葉達が一斉に、甦っているようだ。私は銀時に。銀時がくれた言葉に、何度も何度も救われて、何度も何度も前を向かせられた。銀時だけじゃない。小太郎も辰馬も、私に大事なことを気付かせる言葉をいくつもくれた。アイツらのそのいくつもの言葉があったおかげで、その言葉を私にくれたおかげで、私は、色んなことを諦めずにいられた。逃げずに向き合うことを決意できた。
言ってしまえば、アイツらがケツをひっぱたいてくれなければ、私は立ち止まって、すべてを投げ出してしまっていたかもしれない。情けない話だけれど。
…私は、強くない。何もかもを自分の力だけで何とかして、一人きりで何もかもを背負って、向き合って生きていけるだけの強さなんて、持ち合わせていない。そんな強さに向かって、私は進んでいこうとしていたけれど、それは、もうやめにしたんだ。それで大事なことを見落としてしまうくらいなら、やめてしまった方がいい。
…独りよがりの強さなんて、必要ない。弱くたっていい。その中で、目指せる強さを探すんだ。大事なものをひとつずつ見つめながら。そうして、歩いていくんだ。
…その大事なもののひとつ。今は、それを見つめている。
『……ありがとう、私はもう、大丈夫だよ』
『……あぁ』
そうみてーだな、と。私の言葉を聞いてか、一瞬だけその赤みを帯びた目を何らかの感情に揺らしては、瞬きよりも少しだけ長い時間目を閉じてから、私を見据えてはそう言って不敵に笑った。
『お前はもう、一人じゃねーもんな』
『うん』
帰る場所があり、誰かが待っていてくれる場所がある。小太郎にも、辰馬にも、晋助にも。そして。
『銀時もね』
…皆が皆、ずっと一緒に居られる訳じゃない。それぞれの居場所を作っては、それぞれの歩き方で歩いていく。
それでも、大事な人に帰る場所があるのは。おかえりって言ってくれる誰かが居るのは。
『……そうだな』
胸がいっぱいになるくらいに、嬉しいことなのだ。
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Karin(プロフ) - この作品が好きすぎてもう4回ぐらい読み返してます。とっても面白くて、感動的で、大好きな作品です!銀魂のedにも使われていた桜音という曲を聴いた時に、この作品の高杉と主人公のことみたいだなぁと感じました。高杉と恋仲だった頃の話も見てみたくなりました笑 (8月4日 19時) (レス) id: 9e7f4b97d1 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - ミウラさん» ありがとうございます!こんなご時世ですので暇をもて余すこともあるかと思いますが、私の作品なんかで良ければ読んでやってください!! (2020年5月9日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
ミウラ(プロフ) - ピピコさん» 嬉しいです!楽しみに待ってます(o^^o)その間ピピコさんの小説何度も読み返しますね笑 (2020年5月9日 21時) (レス) id: 3103cb23ea (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - ミウラさん» ミウラさん!ありがとうございます…!!最後まで読んでくださり感謝です…!!高杉さんが出てくるシーンは本当に難しかったです…自分でも書いててしんどかった…!!高杉さんのお話もそのうち書きたいなぁと思っていますのでお楽しみに(o^−^o) (2020年5月9日 19時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
ミウラ(プロフ) - 一気に全巻読めちゃうくらい面白かったです!晋助様のシーンがしんどすぎてずっと泣いてました…笑次は晋助様落ちの小説も書いて欲しいです! (2020年5月9日 8時) (レス) id: 3103cb23ea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2018年6月14日 19時