感謝してる ページ26
『…銀時、』
『ん?』
『…ありがとうね、いつも』
…いつも、いつも。私は誰かに救われてばかりいる。護られてばかりいる。私はそのことを、随分と長い間気付かなかった。気付こうともしていなかった。一人ぼっちになった私に寄り添っていてくれる人が居て、何か大切なことを見失いそうになったら、それに気付かせてくれる人が居て。泣いていたら、何を言うでもなく隣に居てくれる人が居て。私がそれに見向きもしなくたって、声を聞こうともしなくたって、手を差しのべて、私の名前を呼んでくれて。いつだって私がその手を掴めるように待っていてくれる人が居る。10年前からずっと、銀時は。みんなはそうしてくれていたんだ。一人で、私の名前を呼ぶ声に耳を塞いで、差し出された手のひらに見なかったふりをして。そうやって強がって歩いてきた私のことを、皆は見捨てなかった。
…だから、どれだけ傷付くことになったとしても。それが前提としてついてくるとしても、そんなことには目もくれずに、私のことを助けに来てくれた。私に、会いに来てくれた。ただそれだけのために、皆はボロボロになってくれた。私はそのことが悔しくて堪らない。けれど、もう、うつむいてはならない。
…真っ直ぐに前を見据えて、笑っていよう。私の大切な人達が、それを望んでいるのなら、そうしていたいと思う。強がりでも何でもなく、純粋に私は笑みを浮かべた。
『…私が前を向いて突っ走っていられたのは、皆が、銀時が居たからだよ』
無茶したって、転びそうになったって、助けてくれて、腕を引いてくれて。背中を護ってくれて。だから、私は安心して前だけを見ていられたんだ。
『…銀時には、とんでもない心配ばっか掛けちゃったよね。でもホントに、感謝してる』
『オイオイどうしたお前、俺に感謝するとか、あれ、今日って俺の命日?』
『素直に人の感謝を受け取りなさいよまったく』
…銀時は、私が松下村塾に入ってからずっと。ずっと一緒に居てくれた。家族を亡くして脱け殻みたいに日々を貪っていた私を、気に掛けてくれていた。戦争に出てからも、変わらずに、銀時は私のことを見守ってくれていた。今になって気付く。だから私は、救われていたんだと。
…いつもいつも、私はきっと銀時が居たから、何だってやれたんだと気付く。
『…でも、あの時、一人ぼっちになって、もう生きてても仕方ないって思ってたときに、』
あの時の二人のことを、ふと思い出しながら、私は続ける。
『…出会えたのが、銀時で良かった』
心から、そう思える。
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Karin(プロフ) - この作品が好きすぎてもう4回ぐらい読み返してます。とっても面白くて、感動的で、大好きな作品です!銀魂のedにも使われていた桜音という曲を聴いた時に、この作品の高杉と主人公のことみたいだなぁと感じました。高杉と恋仲だった頃の話も見てみたくなりました笑 (8月4日 19時) (レス) id: 9e7f4b97d1 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - ミウラさん» ありがとうございます!こんなご時世ですので暇をもて余すこともあるかと思いますが、私の作品なんかで良ければ読んでやってください!! (2020年5月9日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
ミウラ(プロフ) - ピピコさん» 嬉しいです!楽しみに待ってます(o^^o)その間ピピコさんの小説何度も読み返しますね笑 (2020年5月9日 21時) (レス) id: 3103cb23ea (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - ミウラさん» ミウラさん!ありがとうございます…!!最後まで読んでくださり感謝です…!!高杉さんが出てくるシーンは本当に難しかったです…自分でも書いててしんどかった…!!高杉さんのお話もそのうち書きたいなぁと思っていますのでお楽しみに(o^−^o) (2020年5月9日 19時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
ミウラ(プロフ) - 一気に全巻読めちゃうくらい面白かったです!晋助様のシーンがしんどすぎてずっと泣いてました…笑次は晋助様落ちの小説も書いて欲しいです! (2020年5月9日 8時) (レス) id: 3103cb23ea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2018年6月14日 19時