転校生と主役たち【wrwrd】 (ページ35)

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伝えるページ35

藤宮さんとそんな事を話していると、いつのまにかドリンクをボトルに入れ終わっていた。

そのとき、車のエンジン音がし、見知らぬバスケのユニフォームを着た人たちがぞろぞろと体育館に歩いてくる。

「Aちゃん、他校の人たちが来たから集まろう」

藤宮さんにそう言われ、体育館の中央付近に向かう。

うちの学校のバスケ部員も、他校の人たちが来たと分かると、各自やっていたストレッチをやめ、集まり始めた。

「今日は、お忙しい中練習試合を組んでいただき、ありがとうございます。お互いに、この練習試合が有意義なものになるようにしましょう」

部長の丁寧な挨拶が終わり、ついに練習試合が始まる。

結果から言うと、うちのチームの圧勝だった。
相手チームは、可哀想なくらいボロボロに負けている。

なぜこんな事になったのかと言うと、原因はゾムだ。
ゾムがゲームバランスが崩れるレベルで強かったのだ。

「私は相手チームの人たちにドリンクを配るから、Aちゃんはうちのチームの人たちにお願い」

藤宮さんにそう言われ、部員にボトルを渡していく。最後はゾムだ。

『はい、ゾム、お疲れさま』

「おう、サンキュ」

私がゾムを最後にしたのには理由がある。
やっと、ゾムに伝える言葉が思いついたのだ。

『ゾム、話したいことがあるの』

「なんや」

ドリンクを飲んでいたゾムがこっちを見る。
今はパーカーを着ていないので、綺麗な翡翠色の瞳がよく見える。

『ゾムは前、女なんて所詮そんなもんって言ったじゃん。でも、男も女も同じ人間だから、女ってだけで女性全員を見下しちゃだめなんだよ』

「なんやその綺麗事。女なんて全員、自分のことが1番大切で、自分の欲のためならなんでもする。そういう生き物やろ？」

ゾムが、責めるような視線で私のことを見る。

『たしかに、一部の女性はそうかもしれない。けど、そうじゃない人も少なからず世界にはいるよ』

「そんなわけないやろ。俺が見てきた女は全員、そういうやつやった」

『じゃあ、私を見て。私を見て女がどういう生き物か、もう一度考えて』

ゾムが私のことをじっと見つめてくる。いや、睨んでるなこれ。身長差のせいもあり、割と怖い。

「そろそろ終わりの挨拶するぞー！集まれー！」

この状況を救ってくれたのは、部長だった。