お仕事だから。 ページ3
次々に声をかけられて、戸惑ってしまう。
なにせ、こちらがサインをもらいたいような人ばかりだ。
プライベートでも、大のフィギュアスケートファンではあるが、今日は仕事で来たのだ。
ウキウキしている暇はない。
私は、「すいません、ちょっと失礼します。」と言いながら、人の輪を抜けて、ある人を目で探した。
その人は思いの外すぐそこにいた。
ドキンとする。
花束をぶつけてしまった時に、目が合った。笑顔を見た。
あの時と、同じ痛みだ。
今もまた、あの人が私の方を見ている。
その顔に浮かぶ、あの表情はなんなのだろう。
私は、そんな雑念を振り払って、仕事モードに切り替えて、彼に近づいて行った。
「あの、友野一希選手ですよね?」
「あ、はい‥‥。」
「私、こういう者です。よろしくお願いします。」
私は、いつもの名刺を差し出した。
「映画、見ました。めっちゃおもしろかったです。」
「え、本当ですか?ありがとうございます!」
私は完全に仕事モードの、高い声で言った。
「それでですね、いきなりなんですが、今回は友野選手にお仕事の依頼があって、うかがったんです。」
「えっ!」
さすがに驚いて、目を見開いている。
目、クリクリしててチャーミングだなぁ。
って、仕事仕事!
「私今度、あるプロモーションビデオを作ることになりまして。それに、友野選手に是非出ていただきたいなと。」
「え、マジですか?」
「はい。詳しい説明をさせていただきたいのですが‥‥、今度はゆっくりお時間いただけますか?」
「あ、は、はい。明日一日休みなので。」
「あ、そうですか!良かった!じゃあここの表にある喫茶店でいいですかね。午後の3時とかで。」
「わかりました。‥‥LINEとか交換しといた方がいいです‥‥よね?」
あれ、変かな。とはにかむ笑顔が少年のようで、また胸が痛んだ。
黙って交換する間、私は思わず、チラッと彼を見た。
テレビ越しだと、長身のイメージは持たないが、手足が長くバランスが取れている。
何より、バレエの経験をうかがわせる美しい姿勢と、雰囲気の華やかさが目を引く。
これは、いい画がとれそう。
仕事の脳を働かせながらも、私は彼を見つめながら変な気分になった。
「よし出来た。じゃあ、明日よろしくお願いします。」
私は、自分自身のおかしな気分から逃げるように、彼のもとから離れたが
後で届いたLINEで、私のおかしな気分はさらに加速した。
「お花、ありがとうございました。」
8人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
サクラ - はらさん» ご指摘ありがとうございます!!助かりました(>_<) (2018年5月25日 0時) (レス) id: ebff37a161 (このIDを非表示/違反報告)
はら - オリジナルフラグをちゃんと外して下さい (2018年5月24日 21時) (レス) id: 6df54d9be3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:サクラ | 作成日時:2018年5月24日 21時