落花流水の情【放浪者】

diary.31 ページ33

Aside


あれから早ひと月が経とうとしていた


その間放浪者と私が合間見えることは一度もなく


私の中で事の真相は迷宮入りしていた


ーーーーー


昼下がりのスメールシティ


ランチを楽しむシティの人々や教令院の学生が行き交う賑やかな街並みの中


私はお昼ご飯に買ったシャワルマサンドを手に握ったままぼーっと空を見上げていた


あれ以来放浪者を探せど探せど見つからず


いきなり存在が消えてしまったのでは？と疑うほど何処にもいない


彼は草神様からの依頼でテイワット中どこにでも足を運ぶこともある


だからきっとその関係で今はスメールにはいないのかも…


『お前は一体誰なんだ……か』


あの時放浪者に言われた言葉


一体どういう意味なのだろうか


何故、あれほど彼は狼狽えていたのだろうか


謎は謎のまま


それに私だって…私のこと、ちゃんとわかっている訳じゃない


自分がどうやって生まれたのかさえ実はちゃんと分かっていない


神子さまに拾われる少し前の記憶しか持ち合わせてないのだから


一体、その前の自分はどう過ごしていたのだろうか


『私が聞きたいっての…！！』


モヤモヤを払拭するように私はしばらく握りしめていたシャワルマサンドに思いきりかぶりついた


せめてもう一回目の前に現れてくれたらなぁ


とっ捕まえて訳を聞きたいのに


逃げ足の速そうな彼のことだ、そう簡単にいかないことは分かっているのだけど


あの一件があってから彼のことばかり考えてしまって勉強が手につかない


本当に責任をとって欲しいと思う


なんとかしなければ…


毎日毎日こうして悩んでいることにも疲れて…というかいい加減解放されたいのだ


『……少し、稲妻に帰ろうかな』


故郷……鳴神大社の神聖な空気を吸いたい


神子さまに会ってよしよししてもらいたい


今の私にはそれが一番必要な気がした

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