37.幸せ ページ41
「大丈夫?」
ふらつく僕の心配をする先生が伸ばした手は、僕が逃げたことによって拒否された。
手が使えない今、必死の抵抗。僕の荒い息が部屋に消えていく。
先生は特に反応を起こさなかった。
「まっ……マインドコントロール!!洗脳って言うんですよっ!?それって!!」
所々震えている声を荒らげた。精一杯睨みつけるも先生は微動だにしない。
「操られている亮が僕にとって心の傷になる行動をとることによって、亮を……悪人に仕立て上げようとしたんですかっ!?」
「そのつもりはなかった」
「実際そうなってるじゃないですか!!」
息が切れ始め、先程摂取した少量の水が枯れる感覚がする。
自覚した瞬間疲れがどっと襲ってくるが、そんなことを気にしている場合ではなかった。
「……ここで嘘を吐いてもしょうがないね。僕のこと教えるって言ったし」
少し目線を逸らし何かを思った先生は、すぐにこちらを見つめてくる。
「僕が君のことを大事だと自覚してきた頃に、一番に邪魔に思ったのは亮だった。たとえ兄弟でも奪われるのは許せない。兄弟だからこそかも。
身につけた話術で君の言う……洗脳をしてさ、性に対して嫌悪感を抱くようにしたんだ」
今僕は苦虫を噛み潰したような顔をしているのだろう。
何より亮が完全なる被害者であることがハッキリしてしまった以上、僕は彼に謝らければならない。
いや、謝るだけで済むのかどうかさえ危うい。
「上手くいったときは初めての感情に襲われたよ。心の底から幸せのエキスが溢れてくる感覚、幸せの甘い味。もう一度味わいたいと思わない方がおかしいよ」
満面の笑みを浮かべているこの顔に、拳をめり込ませたい程僕の心は怒りが爆発していた。
「自分の幸せの為に……他人を傷つけて良いと思っているんですか」
返答は無し、そして少し冷たい目線が僕の顔に刺さった。
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故 - komeさん» この作品に対してそのような感情たちを向けられたこと、とても誇りに思います。とてもとても嬉しいお言葉ありがとうございます。 (6月12日 15時) (レス) id: b145d6d25c (このIDを非表示/違反報告)
kome(プロフ) - とても面白い作品に出会えて嬉しく思うと共にもう終わってしまったのかと喪失感もあります。本当にお疲れ様でした。 (6月12日 13時) (レス) @page50 id: 4c2006e05c (このIDを非表示/違反報告)
おパンツドラゴン - え?何やってるんだろ.....頭おかしくなったんかな(((自分に言ってます (2020年6月20日 20時) (レス) id: 981305fe40 (このIDを非表示/違反報告)
おパンツドラゴン - https://images.app.goo.gl/B3CiPe8WwDTRdNTL8 (2020年5月30日 18時) (レス) id: 981305fe40 (このIDを非表示/違反報告)
故(プロフ) - 不知火 綏狐さん» ありがとうございます!お互い頑張りましょうね! (2018年11月11日 23時) (レス) id: a87c411005 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:故 | 作成日時:2017年10月16日 20時